はくしゅろぐ

□スミレの花の咲くころに
2ページ/3ページ

『焼けた肌に妬いたりして』



うっすらと赤くなったデコルテ
うっすらとわかる境界線は、タンクトップの線だろうか


この世界にいるときには、こんなふうに肌を焼くことなんてなかった。
毎日、日が高くなる前に稽古にいどみ、日が変わるまで稽古をする
それもまた、この花園を巣立ったこの人の変化だ。

以前ならこんなふうに焼かなかった。

その変化を解放ととるよりも、なぜだか先に、胸の奥からやなおもいがわいてきた。

どこで焼いてきたの?
誰とそこにいったの?

同じ世界にいるときは、離れてもそんなふうに思うことがなかった。

たぶんそれは、同じ世界で少し違う立場にいるからこそ、だいたいのことは想像できたから。

わかってる、やきもちだ、みっともない。

その跡がせめて水着のラインではなかったことは幸いかも、と精一杯の強がりを思いながら、それを舌でなぞった。

「あ……やっぱり目立つ?」

気付かれてしまった?
わたしの、
この、

「やっちゃったんだよねえ、こないだ外での撮影で、いい天気で、芝生で、あんまり気持ち良かったから、みんなでフリスビーなんかとばしちゃって」

「スタッフさんが飼ってる犬連れてきててねえ、でもこれがぜんぜんやる気なくて、フリスビー投げてもとりにいかないの!」

「誰もとりにいってくれないから、自分でとりに行くんだけどさあ、もう、フリスビーより走ってる時間が長くて、あれ?何してるのあたし、てかんじでねえ」

「あ、ブーメランにすればよかったのか、今度からそうしよ」

「顔は死守したんだよ?もう死活問題だからねえ、紫外線?」

「テルも気をつけたほうがいいよ、って心配ないか」


そうやって溢れるような言葉で、焼けた肌を解説してくれた。

いや、チカさんにとっては解説でも、ましてや弁解でもなくて

ただ、ただ、会えなかった時間をそうして言葉で伝えてくれる。

あるいは、まるで子供が今日一日にあったことを、夢中で話すような無邪気さで


「テル?」

だきしめた、ぎゅっと抱き締めた。


焼けた肌に妬いたりした私に気付かれているかどうかはわからない。

ただ、やっぱりこの人は大きすぎて、今も尚、私より先にいっている気がするからから。

追い付けないけど逃がしたくないから

ぎゅっと力を込めて抱き締めた。










-----------
スミレ刑事のミニライブの二曲目「Fortune」
♪焼けた肌に妬いたりして、という歌詞のこの曲がかわいくて大好きだったのです。

というわけで、テルに登場してもらったんですが、さいきんのうちのテルはなんだか切ない系ですな…。まあそれでもオンザベッドなのはさすがうちのテルとも言えますが(笑)。



こんな辺境でひっそりですが、拍手コメありがとうございました!
「半解凍」になんてうまいことを!と座布団三枚です。

ひきつづきゆるゆる、お願いします。


20110517
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ