日常語リ

□桜家
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涼と初めて会ったのは、いつだっただろう。



たぶん、八歳くらいの時だったような気がする。

お父さんが亡くなってすぐ、お母さんと二人でお父さんの実家に行った。

お母さんはお祖母ちゃんと大事な話があるらしくて、私は一人で広い庭を散歩していた。

お父さんの実家――本家は母屋と離れがある。

その時、私は今まで行ったことのない、というよりお祖母ちゃんの言いつけで近付いてはいけないと言われていた、離れの方に歩いていった。

言いつけを破っていることに不思議と罪悪感は無かった。

ただ何故か、とても惹きつけられていたのだ。



近付いて行くと、離れの窓が開いていた。

ふと、金木犀の仄かな香りがした。

「こんにちは」

突然離れの中から声がした。

窓に近寄っていくと、

「やぁ」

そこには私とは対照的な柔らかな雰囲気の男の子がいた。

でもどこか、自分と似ている気がした。

突然の事に戸惑う私を余所に、その男の子は微笑みながら問うてくる。

「君、名前は?」

私はやっとのことで、声を絞り出して自分の名前を言った。

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