クラウザーが好んで使用していた館に、久しぶりに腰を落ち着けた。
玉座にダラリと腰掛けたクラウザーは楽しそうに横に立つジャギに目線をやる。
尻尾がパタパタ揺れているのが何となく鬱陶しい。
ゆっくりとした動きでクラウザーは手を伸ばしジャギの髪を一房掴んだ。
そのままま引っ張り顔を近づけさせ、うっすら笑みを浮かべる。
ジャギが余計に尻尾をパタパタさせ始めたのにクラウザーは幾分うんざりしながら甘さを含んだ声を出した。
「やって欲しい事があるのだが、報酬はなにが良い」
「何でも良いの?」
白い瞳がキラキラしている。
クラウザーとしてはわかりやすいジャギの態度はやりやすい。
交渉次第では安くお願いを聞いてくれるからだ。
内緒話をするようにジャギの耳元で囁く。
「そんなに難しくはないだろ」
最後にクラウザーはジャギの目を見ながら話しを締めくった。
ジャギは複雑な表情で首を傾け思案しながら同意を示すようにクラウザーの空いてる片手を取り、手の甲に口付けをする。
実の所せっかくクラウザーのお願いが終わって隣に居るのに離れたく無いのが本音だ。
しかし使えるクラウザーの下僕共が今は居ないため、ジャギに振ってきているのは十分理解しているのでかなり渋々といった感じだが。
それでもこんな事がなければジャギに契約など持ちかけないので、一緒にいたいが恩も売っておきたいという打算もある。
天人であろうと悪魔であろうと契約は絶対だからだ。
むしろ守らないのは人間の方だが破れば手痛い目にあう。
そんな思いを知っていて掴んだままのジャギの髪を引き白い眼球を嘗める。
ジャギは電流を流しこまれたような快楽にクラウザーへ抱きつこうとしたが、あっさりとかわされた。
拗ねたように口を尖らせ腕組みする。
「それが対価で良いなら高く付くぞ」
クラウザーが呆れながら言ったが、ジャギはそれで良いと言い出した。
内心クラウザーはほくそ笑みながら手招きをする。
安上がりだと。
しかしジャギにとっては至高の贅沢だ。
唇を重ねると一瞬クラウザーは嫌そうにピクリ体を震わせたがその後、別段文句を言うで無く身じろぎもしない。
「貴様が入れるのか、俺が入れるのか」
キスの合間にどうでも良さげに尋ねる。
「突っ込んで欲しかったら奉仕してくれ」
ジャギはまだ犯る気になっていないクラウザーの下半身に微妙な表情になった。
「異常性欲者の名が泣くよクラウザー」
「別に年がら年中臨戦態勢なわけじゃない」
クラウザーは片目だけ引き上げ嘯く。
余計なお喋りはしたくないのかジャギを引き寄せ口に舌を差し込んできた。
それに流されるようにクラウザーの体を弄りだす。
ジャギが犯りやすいように多少体をひねる以外は全くクラウザーは動く気配さえみせない。
それでも嬉々としてクラウザーを抱きしめているジャギは着実に事を進める。
結局一回の交わりだけで館から放り出されたジャギは、かなり不服な面持ちでクラウザーに頼まれた場所に降り立った。
本音を言えばジャギはクラウザーがカミュに執着しているのが気に食わない。
全てはクラウザーのモノだがその代わり誰のモノでない状態であれば、ジャギもこんな思いをしなかった。
それでもまだ触らせて貰えるのだから出来るだけこの状態を維持したい。
やはりクラウザーとカミュが2人きりで良い雰囲気だったのを邪魔して正解だったと黒い笑みを浮かべる。
我ながら上手く立ち回ったと思う。
でも結果的には同族にはあまり注意を払って居なかったようだから成功したようなものだ。
そうでなければ色々と難しい。
早くクラウザーの頼み事を片付けて館に戻ろうと気合いを入れ直し魔力を集中させる。
ジャギは自分が居ない内にクラウザーとカミュの間に何かあれば悔しい。
しかしまだ魔力が完全で無かったクラウザーに、力を分けてしまった自分の甘さにジャギは自傷気味に口を歪めた。
悪魔らしからぬ行為だった。
人間に影響されるものではない。
クラウザーにしろジャギにしろ。
そうすればこんな事に、思いに、なることは無かったのに。
もしかしたらカミュも。
馬鹿な考えにジャギは内心焦りが浮かび、振り払うように頭を振る。
誰のモノにならなかったから諦められた。
いや、諦めるふりができた。
ジャギは焦りや怒りや自分で処理出来ない感情をぶつけるように魔力を放出した。
その魔力によって作られた炎は青く激しく揺れめいていた。
おわり。
今回のテーマは三角関係でした。
カミュ×クラウザーメインのジャギ→クラウザーてことで。
ちなみにどちらが攻めかはお好きな方で。
もうどっちでも良い。
両方とも受けに見えてきたから。