DRRR

□はせいと!
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その肩に、手を乗せる。
ピクリと、小さく跳ねて、強張った体に、小さく笑んだ。

「ねぇ、臨也」

耳元で、囁くように名前を呼ぶ。

「な…ん、だい?ダイア」

強張った声に、ぼくの表情は自然と綻んで行く。

「好きだよ、僕の……愛人にならないかい?」

◆ ◇ ◆


ダイアが、臨也に向かって何やら囁いている。

何を囁いているのか、何て。考えるまでもない。
どうせ、好きだのなんだのと、臨也の事を口説いているのだろう。

ダイアは浮気症だ。
それも筋金入りの。

わたしと云う妻がありながら、目を離せばすぐに其処らの女の子を口説いている。
嫉妬深いわたしの性格を理解しながらも、ダイアはそれを改めようとはしない。

好きな事をしているだけだと、悪びれもせずに笑うのだ。

その度に、わたしは深夜に家を出る。
ダイアが眠った頃に、こっそりとベッドから抜け出して、バスルームに伝言を書きなぐってから、セルティの家へと向かうのだ。

セルティと、その恋人の新羅はわたしに優しい。
多分新羅の方は、自分の愛するセルティがわたしに優しいから、優しくしてくれるだけなのだろうけれど。

次の日、ダイアが迎えに来た時に、二人は凄い剣幕で怒ってくれるのだが、ダイアは聞く耳を持たずに、浮気を繰り返す。

そんな、ダイアが。

最近は、臨也『だけ』を口説くようになった。

今まで、女の子にすら口にしなかった、「愛人にならないかい?」なんて言葉を以て。

最初はそりゃ、臨也に嫉妬した。
相手が女の子ならともかく、臨也は男なのだから。

なんでよりにもよって!なんて思ったりもしたし、あからさまに臨也に意地悪をしたりもした。

だけど…その、なんだ。
何て言うか…ここ最近、ダイアに口説かれている臨也を見ると…嫉妬とかじゃない、もっと円い感情がふつふつと湧いてくる。

「ね?良いだろう、臨也」

とっておきの声を、臨也の耳に流し込むダイアを見て浮かぶのは、紛れもない嫉妬心だ。

ただ、今までと違うのは、

「ぇ…あ、その……」

顔を真っ赤にして、身をよじってダイアから離れようとする臨也に対してではなく、ダイアに嫉妬している、と云う所だろう。

顔を真っ赤にして照れる臨也は…なんと云うか、凄く可愛い。

どうやら愛される事に慣れていないらしい臨也は、ダイアの言葉に、こうやって簡単に赤面するのだ。
あちこちに視線を彷徨わせて、最終的に恥ずかしそうに俯きながら、こう告げる。

「か…からかうのはやめてよ…ダイア」
「ふふ、照れてる臨也も可愛いね」

ニコリと笑みながら、再びダイアが臨也の肩を捕らえようとする――――のを、勿論わたしが黙って見ているはずもなく。

【ダイア!!いい加減に臨也から離れろ!羨ましい!】

声をあげて二人の間に割って入った。

◆ ◇ ◆


頭に、直接声が響く。
同時に、それまで触れていたダイアの腕が、引き剥がされる。

ルーティはとても嫉妬深い。
それなのに、ダイアはとても浮気症だ。

それで良く今まで夫婦をやってこれたなぁ…なんて、思わないこともないけど、こう云う二人だからこそ、二人は惹かれて、結婚したのかもしれない。

それに、最近はダイアも落ち着いたみたいで、俺に冗談で愛を囁く程度で収まっているみたいだし。

……冗談だと、からかっているんだと解ってるんだけど、ダイアの眼は真剣そうな色を帯びているし、吹き込まれる声が甘くて、どうしても過剰に反応してしまう。

だから、毎回ルーティが嫉妬して間に入ってくるんだけど……

「ルーティ…?」
【なんだ?臨也】

なんで、俺は今ルーティに抱きしめられているんだろう?
抱きつくべき相手は、ダイアじゃないのかい?

「何してるの?」
【うん?お前を抱きしめている】

もしかして、本人には抱きしめている気など無くて、偶然の産物なのかもしれない、なんて思って本人に確認してみたんだけど、どうやら勘違いでも偶然でもなく、彼女自身の意思で俺を抱きしめているらしい。
それを理解して、俺はさらに訳が分からなくなる。
どうして、俺を抱きしめているのだろう。

「…何で?」
【勿論、わたしがお前を抱きしめたいからだな】

当然、と言うかのように答えられてしまえば、「あぁ、そう」と気の抜けた様な返事しか出来ない訳で。
結局、俺は暫くルーティのしたいままに抱きしめられる事にした。

【ほら、臨也。クッキーだぞ】
「あ、うん。有難う」

甲斐甲斐しく俺の口元にクッキーを運んだりしているルーティを見ると、どうも俺を子供扱いしている様な気もするけれど、まぁ、彼女が楽しそうなのでよしとしよう。

目の前で嫉妬に震えているダイアは、あえて無視をする。
流石に、自分は浮気(まぁ最近はただのおふざけだろうけど)を散々しておいて、奥さんが少しばかり俺に構っている位で嫉妬するのはお門違いだと思うんだよね。

自業自得って、言うのかな。こう云うの。

「ずるいよ!」

涙目で叫んだって、俺は同情したりしない。
ルーティは嫌がるだろうけど、少しだけ意地悪をしてやろう。

「ルーティ、」
【臨也?】

たまには、ダイアに意趣返しをしても良いと思うんだよね、彼女は。

俺を抱きしめている彼女に、ゆっくりと体を預ける。
……出来るだけ、胸には体が当たらない様に配慮する事を忘れない。
腹の前で組まれた腕をそっと掴んで、ギュっと、密着させるように抱きついた。

【臨也……】

ルーティが俺を呼ぶ。
声が若干震えている様に聞こえるのは、矢張り嫌だからなんだろうね。

ダイアは嫉妬に濡れた様な目で此方を睨みつけているし、俺的には満足した。
これ以上ルーティに抱きついているのも、彼女に申し訳ない。

「ごめんね、」

ゆっくりと体を離しながら、彼女へ謝罪の言葉を向ける―――はずだった。の、だが。

【可愛いぞ臨也ぁぁああああ!!!】
「羨ましいよルーティィィィイイ!!僕も臨也に寄りかかられたい!!寧ろキミと臨也の間に挟まれたい!!」

キィン、と、頭痛がするほどの大声を頭に直接たたき込まれ、離しかけた体は再び彼女の胸へとダイブする。
それに引き続き、聞こえてきたのはダイアの嫉妬と羨望に塗れた(まみれた)声だ。

……ただし、何故かその対象がルーティになっていたが。

「ルーティと臨也が抱き合ってキャッキャウフフな状態とか何これ天国かい?!天国なんだね?!!!私も混ざる!」

そう叫んで、ダイアは俺とルーティのもとへと飛び込んでくる。

「【な?!!】」

驚いて声をあげてしまった俺達を気にも留めずに、俺ごとルーティを抱きかかえて、ダイアは楽しげに告げた。

「臨也とルーティ、まさに両手に花だね♪」

上からはダイア。下からはルーティ。間に挟まれてギュウギュウと抱きしめられながら、俺はぼんやりと考える。

(もしかして俺は、愛されているのだろうか)

…なんて、ね。

―― 愛 情 過 多 に て 。
(愛されているのだと、自惚れた錯覚をしてしまいます)

End.

(まぁ…あり得ない事なのは、わかっているんだけどね)(ボソッ)
{どうした?臨也。苦しいのか?}
(ちょっと力を入れすぎたかな?ごめんよ、楽園の前では力の加減も上手くは行かなかったのさ)

(………いや、なんでもないよ。二人の間はあったかいなぁって思ってね)

{!そうか。それならもっとギュっとするか?}
(それだと本当に苦しくなっちゃうよ、ルーティ。ここは僕が臨也を口説き落として愛人に…)
{ふざけるなダイア。誰がお前に臨也をやるか(スパッ)}
(でもね、良く考えてごらんよ、ルーティ。臨也が僕の愛人になれば、二人で臨也にあんなことやこんなことだって出来ちゃうかもしれないんだよ…?)
{………成程。良く分かった…臨也、ダイアの愛人になってくれ!}

(えぇええ?!!)





+++後書き+++

自惚れでもなければ錯覚でもないよ臨也君!(いきなり何)

闇医者派生夫婦×臨也君も大変美味しいんじゃないかと思う割と無節操な泉です(笑)

オリジナルの二人はまだ結婚してませんが、この二人はナチュラルに結婚しているイメージがあります(笑)

ルーティのダイアに対する呼び方を「ダーリン」にするかで一日悩んだとかすごくどうでもいい裏話です(笑)
ついでに、ルーティがテレパシー的な会話方法を使うのは、実はダイアと臨也だけ、と言うどうでもいい設定があったりなかったり。(どっち)

ダイアの浮気症設定は、ルーティの歌から。
悪びれないダイアはダイアの歌から取ってます。

しかしどうしてルーティはこんな浮気症と結婚したんだろうか(笑)

最初、題名を『君、家族化計画進行中』にする予定だったのですが、ルーティがダイアの愛人発言を認めるのがあまりにも遅すぎたため断念しました(笑)

うぅん…相変わらず言葉が纏まらない…後書き書くのは苦手であります…(苦笑)

ではでは、今回も大分趣味に走った感が否めませんが、少しでもお楽しみいただけていましたら幸いでございます♪

2011/06**


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