DRRR

□かりいざ!
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◆ ◇ ◆


狩沢が真剣な顔で俺を新羅の家で開かれるらしい鍋に誘ってくれている。

本当に、狩沢は変わってると思う。俺なんか誘ったって、場の空気がぎこちなくなるだけだろうに、ね。

それでも、誘ってくれた事は本当に嬉しかった。
俺が行かないなら自分も行かないって言ってくれたことも、ね。…まぁ、言わないけどさ。

だから、なのだろう。

俺は、自分でも気付かないうちに、頷いていたらしい。

「イザイザ愛してるぅ!」

いつものように大げさに愛を叫びながら、狩沢が抱きついてきた。
うん、いつもの事だ。いつもの事、なんだけど。

「道のど真ん中で抱きつくなぁ!」

俺はいまだに、狩沢のこの愛情表現に慣れる事が出来ない。
恥ずかしいんだよ、気付けよ、ってか自重しろよ!

「さっきは抱き返してくれたくせにぃ」

ぷくぅ、と、頬を膨らませながら、拗ねたように告げてくる狩沢に間髪いれずに俺は頭を下げた。

「頼むからアレは忘れてクダサイ」

いくら嬉しかったからって、あれはないよね、俺。あぁあ!だめだ考えるな思い出すな!それをしたら俺、多分、爆発出来る気がする。

そんな、いろいろ大変な事になっている俺の頭の中に気付いているのかいないのか、狩沢は真面目な顔で「それは無理☆」等と言ってのけた。

「あんな可愛くて貴重なイザイザは脳内に保護掛けて永久保存だよ!思い出しては萌え(生きる活力)に昇華させるつもりだから☆何ならもっとやってくれたっていいんだよ?思い出す必要もないくらい毎日、とか」
「カンベンシテクダサイ」

思わず片言になる俺に、狩沢は笑う。「そんなことより!」と、手を引かれた。

「早くいかないと、お鍋始まっちゃうよ、イザイザ!」

俺の手を引いて前を歩く狩沢に従って、俺も足を進める。

願わくは、新羅の家に着くまでに、俺の意思を無視して火照ってしまったこの頬が冷めますように。



◆ ◇ ◆



「やぁ、いらっしゃい」

京平が「いつもの連れも呼んでいいか?」と言った時には正直驚いた。
狩沢さん達を誘ったってことじゃない。彼女達もセルティとは交流があるからね。そうじゃなくて、僕はてっきり、京平が真っ先に問うのは、臨也の事だと思っていたのだ。

だけど、いや、だから、かな?
ドアを開けて、そこに臨也がいた事に、僕は正直驚いたんだ。
臨也の後ろから、狩沢さんが出てきた事にも、驚いたんだけどね。

「おぅ、来たか」
「あ、ドタチン!電話ありがとぉ」

僕の後ろから顔をのぞかせた京平に、狩沢さんがニコニコと笑顔で手を振っている。
京平は二人の傍に寄ると、臨也の頭に手を乗せた。

「良く来たな、臨也」
「ドタチン…狩沢が[俺も一緒に]って誘われたって言ってたけど…本当に来てよかったのかい」
「当たり前だ、じゃなかったら狩沢も誘ってねぇよ」

くしゃりと、髪をかき混ぜながら京平は笑みを見せる。
それを見て、臨也の表情が緩んだ。

「ドタチン、ラブッ」

靴を乱暴に脱ぎ散らして、勢い良く京平に抱きつく。京平はいつもの事だと言うように、普通に抱きとめていたけれど、狩沢さんはそうは行かなかったらしい。

僕はてっきり、ほら、彼女の事だから、「ドタイザ萌えーーっ」とか、そう云う事を叫ぶのかと思っていたのだけど、ね。

「っ!イザイザずるい!何でドタチンにはそんなに平気で抱きつくのに私には抱きついてくれないの?!さぁ!イザイザカモンッ!今すぐ私の腕に飛び込んでおいで!」
「んなっ…!で、出来る訳ないだろ?!」

眼を輝かせてスタンバイしている狩沢さんはよく見かけるけど、顔を赤らめて明らかに動揺してる臨也って言うのはなかなか珍しいものだ。
こんな顔をさせる事が出来る彼女はいったい何者なのだろうかとぼんやり考えていると、京平が臨也をおろしながら、「良いから早く上がれ、後はお前ら待ちだ」と告げている。

確かにその言葉は正論なんだけど…家に上がるように促すのは、一応家主である僕の仕事なんじゃないかな。…いや、うん、まぁいいんだけどね。

僕が先頭になって、奥の部屋へと戻って行く。

ドアを開ければ、待ち望んでいたかのようにセルティがお玉を持って掛け寄って来た。

『あぁ、いらっしゃい狩沢…と、臨也もいたのか』

PDAを打ち込むセルティは、決して臨也がいた事に不満を抱いた訳じゃないんだよ、一応言っておくとね。ただ、来るとは思ってなかったから付け足すみたいな言い方になっただけで。
大体、セルティが!優しくて慈悲深い彼女が!臨也が来たからって嫌がる訳がないだろう?

だけど、臨也にはセルティが嫌がってるように見えたらしい、僅かに表情が陰った事に気付かないほど、僕達の付き合いは浅くない。

「やぁ、セルティ。鍋なんて楽しそうな事やるのに、この俺が来ない訳ないだろ?招待されなくたって参加して見せるさ」

フフン、と、人を見下すような笑みを浮かべながら、臨也は告げる。
その言葉に、先に座って大人しくしていた静雄が、キレた。

「あ゛ぁ゛?手前なんて誰もお呼びじゃねぇんだよ。呼ばれてもねえのに平然と立ってんじゃねぇ」

ミシリ、と、机が嫌な音を立てる。
…って、ちょっと待ってよ!それこの間買い換えたばっかり…ってか勘違いしてるよ静雄、今回、臨也は呼ばれてここにいるから。
まぁ、呼んだのは僕でもセルティでもないけど。

「静雄」

京平が静雄を呼ぶ。
静かに、だけど、京平の声はよく通る。

「あ゛?」
「臨也を呼んだのは俺だ」
「門田が?」

「あぁ」と頷く京平に、静雄は納得したらしく、机を掴んでいた手を離してくれた。
あぁ、良かった。これで買ったばかりの机の平穏は守られたよ。

「さて、そろそろ始めようか。臨也も狩沢さんも座りなよ」

席を勧めて、僕も自分の席に腰掛けた。


◆ ◇ ◆


新羅に席を勧められて、臨也と狩沢はテーブルを見やる。
現在の席順は、入口側から、

【渡草】【遊馬崎】【門田】【    】
【静雄】【     】【新羅】【セルティ】

となっている。
門田と静雄の隣が空いている訳だが、こうなると、自然と配置は決まってくるものだ。

「それじゃぁ、狩沢は遊馬崎の向かいだね、俺はドタチンの隣、と」

臨也の提示した配置は、正解と言っても過言ではないだろう。仮に静雄の隣に臨也を座らせて、果たして安心して食事が出来るだろうか。
いくら食事中は喧嘩をしない、と約束した所で、他のメンバーの心理的疲労は大きそうだ。

しかし、狩沢はそれでは納得しなかったらしい、「えー」と、分かりやすく不満気な声をあげている。

「え、狩沢、ドタチンの隣が良いの?遊馬崎の向かいの方が色々話しながら食べれるし、ちょうど良いんじゃない?」
「違うよ!ゆまっちの向かいなのは確かに色々話せて楽しそうだけど、イザイザの隣がいいの!嫁が旦那の隣にいるのは当然でしょ?」

その言葉に、門田達いつものメンバーは苦く笑い、静雄はそう云うものかと首を捻った。
そして。

「え…えぇええええ?!!」
『か、狩沢と臨也は付き合っているのか?!』

新羅とセルティはと言えば、互いに驚いた様な声をあげている。

そんな二人の反応に、「そう言えばまだ言ってなかったっけ」と、のんびりと臨也は呟いた。
狩沢も、「そう言えば、最近会う機会もなかったしねぇ」と呟きながら、笑顔で口を開く。

「イザイザは私の嫁になったんだよぉ♪」

彼女の言葉に、新羅は「そう云う事なら」と、席を立った。

「夫婦を引き裂く訳にはいかないよね!勿論、僕とセルティの事も引き裂かせはしないよ!セルティの隣は僕だけのものさ!…だけど、万が一にでも静雄と臨也が喧嘩を始めそうになったら止められる人間が傍にいないといけないからね…よし、じゃぁ、静雄。仕方ないからセルティの前に座る事を許してあげるよ。あぁ、でもだからと言ってセルティに変な色目とか使ったら容赦しグボァ!ちょ、セルティ、それは首、首に入って…っっ」
『だから、お前は余計事を言うんじゃない!』
「照れてるセルティも可愛いよ…で、でも…そろそろ息が…苦し…っっ」

何処か恍惚の表情を浮かべながら言葉を紡ぐ新羅の事は放っておく事にして、静雄は大人しく門田の隣へと移動する。

狩沢は満足そうに笑みながら、渡草の向かいへと座り、臨也は苦く笑いながらも、その隣へと腰掛けた。

「それじゃぁ、そろそろ始めようか」

新羅の言葉に、セルティが台所から土鍋を運んでくる。
予めセッティングしてあったガスコンロの上にそれを乗せ、それぞれのグラスに飲み物を注いだ。

「それじゃぁ、うーん、セルティの貴重な愛の手料理を食べられる事に乾杯って事で!あ、ちなみに、セルティの愛は俺だけの物だから、そこは勘違いしない様に!」

軽くグラスを持ち上げた新羅が告げれば、その場の全員が苦笑しながらも、同じようにグラスを持ち上げ、口を開く。

「「「『乾杯!』」」」

End.

(あれ?狩沢、酒じゃないんだね?)
(あー、私お酒嫌いなんだよね、美味しくなくない?飲めない事はないけどさぁ)
(そうかな?俺は割と飲むけど…そう言えば、シズちゃんもビール嫌いだよね)
(…にがいのきらいなんらよ、れも、チューハイならのめっぞぉ?)
(うっわ!シズちゃんもう酔ってんの?!まだ一口しか飲んでないよね?!)
(よってねぇ…よってねぇぞぉ?)
(頬は紅潮してるし、眼はすわってる、ろれつも確り回ってないみたいだし、これは立派な酩酊状態だよ、静雄)
(へぇ、シズシズってお酒弱いんだねー、いがーい)
(狩沢さんは飲まないだけでザルっすよね)
(んもぅ、ゆまっちぃ、そう云うの言ったらだめだよ!酔った振りしてイザイザにセクハラ出来ないじゃん!)

((しなくて良い!!))





アルコールについては完全なる泉の妄想です。
狩沢さんがアルコール嫌いなのはキャラカードから頂いた情報ですが、嫌いなだけでザルだったらいいよね!と、相方様と語りあい(笑)ついでにシズ君は下戸でも良いんじゃないかな、と思ってみる。

強くても良いんですけどね、泣き上戸と笑い上戸と絡み酒とセクハラ魔が一つになった酔い方をするシズ君で盛り上がったので、我が家のシズ君は大凡下戸です(笑)
シズ君が本気で酔っぱらいだすと、シズ→イザモードに突入します(笑)


2010/12**



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