DRRR

□たとえば、
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◎突発品。故にグダグダ。
◎たぶん渡臨。と言うか渡→臨。



◆ ◇ ◆


高層マンションも、立ち並ぶビル群も、桜色で縁取りされたように感じる、季節は春。
街が、パステルカラーに、淡く色づいて、一見柔らかな表情を見せていた。

「あ、イザイザはっけーん♪」

後部座席に乗せた狩沢から、楽しげな声が上がる。
助手席の門田さんが、目を凝らしてようやく見える距離にその人はいたらしい。感心したように呟いた。

「あ?…あぁマジだな。しかし狩沢良く見えたな…」
「狩沢さんの眼は見たい物を発見した時はどんな高性能カメラよりも素早くピントを合わせる事が出来るっすからねえ」

狩沢と同じく後部座席に座った遊馬崎が、何故か自分の事の様に誇らしげに胸を張る。
そんな遊馬崎に、俺と門田さんは二人で苦く笑った。

車を走らせれば、ようやくはっきりと彼の姿が見えてくる。

都会にしては珍しい桜並木を、楽しげにくるくると回りながら歩く彼―折原臨也―は、時折舞い散る花弁を捕まえようとでもするかのように、手を伸ばす。

そして、幼い子供の様に、楽しげに、満面の笑みを浮かべた。

「―――ッ!」

瞬間、思わず足に力がこもる。
ぐん、と、体がシートに押さえつけられる感覚。

「きゃぁっ」
「わっ」
「うぉっ」

ほぼ同時に、他の三人から声が上がった。
あぁ、アクセルを踏みつけたのだと理解したのは、それから数秒後の事。

「もぉ、とぐっち、どうしたのよぅ?」
「いきなり加速とか何かあったんすか?加速世界に行きたかったんすか?」
「もっと先へ《加速》したくはないか?的な?あ、でもでも、とぐっちならやっぱり豆腐屋の息子だよ!」
「おぉ!それなら水を汲んだ紙コップを用意しないといけないっすね!」

キャイキャイと、何やら楽しげに騒ぎ始めた後部座席の二人に、門田さんが小さく溜息をついた。

「わるい、」

小さく謝罪の言葉を入れながら、俺は、先程見た光景を思い返す。


桜の降り注ぐ中、無邪気に笑う。
心から、楽しそうに。

アノ、折原臨也が。

「あれ?渡草さんどうしたんすか?」

顔、赤いっすよ?

遊馬崎の言葉に、俺は言葉を返す事が出来なかった。


(これが…ギャップ萌えって奴か…)
たとえば、こんなの始まり。


(〜♪)
(あ、イザイザから電話だ、珍し〜)
《狩沢、さっき並木の前の道通った?》
(うん、通ったよ♪もしかして気付いてくれたんだ?)
《渡草さんのバンみたいなのが見えたから、もしかしてって思ってね。》
(さっすがイザイザ、それでこそ私の嫁!)
《…(照)それで、さ。もし、良かったらなんだけど、―――》

(イザイザ可愛い!愛してる!今すぐ行くよ!今すぐ!だからそこから動かないでね!)
《え、いや、別に今日じゃなくても…って、狩沢?おーい…駄目だ、通話が切れてる……》

(渡草っち!今すぐUターンして!お花見に行こう☆)
(臨也からの電話、花見の誘いだったのか)
(でも、俺ら何にも持ってないっすよ?)
(そんなのあの辺で買えば良いよ!)

(……折原と花見、か。俺らも同席して構わないのか?)
(勿論♪)

(よし、それじゃぁ、しっかりつかまってろよ!飛ばすぜ)
((おー!!))
(……狩沢、遊馬崎、取敢えず座ってシートベルトをしろ/溜息)



End.
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