DRRR

□君ト幸福。
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DVD5巻、書き下ろし小説のキャラバレ有。苦手な方は逃げてください。




「狩沢は、さぁ」
「ん?」

何度目かのデート。今日は前日まで仕事でごたごたしてたから家には上げられないって言うイザイザの提案に従って、池袋をぶらぶらしてる。

正直、池袋を歩くのはあまり好きじゃない。
だって、ほら。何かしら知り合いが多いから、しょっちゅう声かけられて、ゆっくり二人で歩くわけにはいかないし、何よりあの高性能イザイザ探知機を持ち合わせたシズちゃんに見つかる確率が高い。

だからできればイザイザの家でのんびり過ごすのが私は好きなんだけど…まぁ、無理は言えないよねぇ。

え?私の家?やだなぁ、漫画とか原稿とか資料とかネタ帳とか薄くて高価な本とかいっぱい詰まってる、あのカオスな部屋にイザイザを上げられると思う?
そもそもイザイザ座らせるスペースって言ったら、多分ベッドの上くらいだよ。

…あ、でも一回連れて行くのも良いかも。リビングなら一応片付いてるし。

イザイザ、甘楽ちゃんリアルでやってくれないかなぁー

カオルに頼んだら喜んで手伝ってくれそうな気がするんだよねぇ。
甘楽ちゃんはセミロングかな。ツンデレの基本ツインテもありだと思うケド。
ひらっひらのスカートとか穿かせてさぁ、「甘楽ちゃんでーっす☆」とかやってほしいなぁ…
………よし、次のデートは家に誘ってみよう。

そんな事を考えていると、イザイザから声が掛った。ここで話は冒頭に戻る。

顔を見れば、イザイザは何処か言い難そうな、言っていいものかと考えあぐねているかのような表情を見せた。
他の人なら多分『珍しい』って思いそうな表情。でも、イザイザを嫁に貰ってからの私は、この表情を何度か見ている。

思いのほか、イザイザは繊細なんだよね。
時々変なスイッチが入るみたいで、こんな顔をしている時は大体、何か私からすれば凄くくだらない事を考えちゃっている。

「何で、俺なの?」

もごもごと言い辛そうに絞り出された言葉は、案の定、私からすればとんでもなく下らないことだった。

「何が?」とぼけてそう返す事は簡単だ。何の話?あ、今ここを歩いてる理由?それだったらデートだからだよぅ、あったりまえでしょ?

そうしたらイザイザは多分「そうじゃなくて」と呟いて、核心に触れる単語を話すか、もしくは「なんでもない」と話を終わらせてしまう。
前者ならまだいいけれど、後者になってしまったらちょっと困る。

案外イザイザはため込むのだ。それで、自分の中に蓄積したそれを、なかなか吐き出してくれない。
ある日突然「狩沢、あのさ、俺…」なんて別れを切り出されたら修復するのはきっとなかなか難しい。

それが分かっているのに、どうして態々とぼける真似をしなければならないのだろう。
だから、私は言葉を返す。イザイザの言いたい事を正確に拾って、イザイザが二度とそんなことを思わなくても良いように。

「イザイザ、何でそんなこと思うの?私の『好き』はきちんと伝わってなかった?」
「別に…そう云うわけじゃないんだ。分かってるんだけど、だけど、捻くれた俺は考えてしまうのさ。俺よりも遊馬崎と一緒にいる時の方が、狩沢は楽しそうだなぁってね」

……イザイザ、比較の対象が間違ってるよ…そんなこと言ったら私だって言っちゃうよ?
…言っちゃうよ?

「私からすれば、イザイザはドタチンと一緒にいる時の方が笑ってるように見える」
「は?…そりゃぁドタチンは高校の時からの仲だからね。ってか…狩沢と居る時は笑ってる余裕なんてないんだよ」

うん、知ってるよ。
ドタチンはお母さんだもんね。そりゃぁ、いっぱい笑うよね。
悪だくみする必要もないから、素で話すよね?

「同じ事だよ」

そう、同じなのだ。私がゆまっちと一緒にいる方が楽しそうって言うなら、それは当たり前。だってゆまっちは相方だからね。萌え語りだって出来るし、修羅場の時は製本手伝って!とかだって言えちゃうよ。

「ゆまっちと一緒にいる方が楽しそうなのは趣味が同系だからだよ。だから確かに、ゆまっちと居る方が、私は楽しいかもしれない」

でもね?

ちょっと落ち込んだみたいに見えるイザイザに聞こえるように、しっかりと、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

きちんと聞いて。こちらを向いて。勘違いを、しないで。

「私は、イザイザと居る時、一番幸せなんだよ」

それこそ、BL(趣味)を目の前にしてる時とおんなじくらいにね。

そう付け加えて、私は笑った。
言葉の意味を理解して、イザイザの顔に朱がさす。
その顔を見て、私はもう一度、笑った。

「何か不安になったら全部言えば良いよ?ぜぇんぶ受け止めて、そんなの勘違いなんだって、笑い飛ばしてあげるからねっ!」
「ほんと…狩沢って時々すごく男前だよね」
「そりゃ、イザイザの旦那様だからね!私は」

「頼もしい限りだよ」そう呟いて笑ったイザイザの顔に、あぁ、やっぱり幸せだなぁ。なんて、しみじみと思うのだった。

ト幸
(キミとシアワセ)


「そう言えば、イザイザは私と居ると笑ってる余裕がないって言ったよねぇ?」
「……どんな顔すればいいのか分からないんだよ、あと、気恥ずかしくて、ね(ボソボソ)」
「…っっッ!!!萌えーーーーーーっあぅ、やっぱりイザイザ可愛いよぉvvvvv」
「うわっ?!ちょ、狩沢!いきなり抱きつかないでよ!///」

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