DRRR

□行動理由。-前-
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◎新セルの前提は吹っ飛びました。
◎セル(+)イザ前提、静→→臨+臨也総愛。




折原臨也は、人間が好きだ。
故に彼は人を観察し、人を愛する。

彼は、すべての人間を愛していた。
善人も、悪人も。
老いも、若いも。
男も、女も。

そして、

彼が唯一、その唇から嫌悪を零す、平和島静雄すら、愛していた。

彼は人間が好きなのだ。
いくらその身体能力が人間離れしていたとしても、突き詰めてしまえば静雄もまた人の子。
彼の愛すべき人間に、変わりはないのだから。

『臨也、今日も行くのか?』
「もちろん」

心配する様な声色が彼へと掛けられる。
その言葉に、彼は笑って見せた。心配いらない、と。

「人間を見ているのは、とても楽しいからね!」

行ってきます、と、声を掛けて、彼は住処から飛び出した。

長い長い階段を、息が弾む気配も見せずに駆け降りる彼は、人ではない。

今彼が下っている長階段の上にある、とある神社。
その神社に住まう神に仕える眷族が、折原臨也である。

◇ ◆ ◇

『……ハァ』

飛び出して行った臨也を見送った神は、小さく溜息を零した。
彼女の名はセルティ、【口の堅い神】と、参拝者の間では有名な神だ。
彼女に向かって、人には言い難い様な相談事や悩み事を吐露すると、不思議とその後、事が良い方向へ運ぶと云う。

彼女自身の力は決して大きなものではない。ほんの僅かに、参拝者の背中を押す程度。
それでも参拝者が絶えないのは、参拝者の相談事を聞いた彼女が、眷族の臨也とともに考えた、ほんの僅かなきっかけが、とても的を射ていて、効果的な物であったからなのだろう。

彼女は思う。
ここまで的を射たきっかけ作りが出来るのは、臨也の人間観察のおかげなのだろう、と。

しかし、彼女は心配なのだ。
街に向かう度、大小の差はあれども、必ず傷を負って帰ってくる、臨也の事が。

『あいつは、どうしてあんなに怪我をしてまでも池袋に行くのをやめないんだ……?』

人間観察なら、何処ででも出来る。
確かに、池袋は近い。
何しろこの神社は池袋の中にあるのだから。

しかし、いくら近くても、毎回怪我をするような街だ。
何も好んでこの町で観察を続けなくても良いだろうに。

『池袋でないといけない理由でもあるのか…?』

そう呟いて、彼女は首を傾けた。

◇ ◆ ◇

一方、自分の主たるセルティがそんな心配をしている事を知ってか知らずか、臨也は池袋市街を疾走していた。

「イーザーヤァアア!待ちやがれこの野郎!池袋にくんなって言ってんだろうがぁぁぁあ!!」

臨也の後ろからは、怒声と破壊音が聞こえている。

声の持ち主は、金髪、サングラス、バーテン服。

池袋で生活する人間で知らない者は居ないと言っても過言ではない人物。
池袋最強の異名を持つ男、平和島静雄だ。

走り回る臨也の後ろを、道路標識片手に追いかけまわしている。

そんな彼へ視線を向けながら、臨也は足を止めることなく、声をあげた。

「ほんっとシツコイよ、シズちゃん!今日は俺、シズちゃんをからかいに来たわけじゃないんだよね!」
「うるせぇ!てめぇが池袋に居るってだけで臭くて仕事に手が付かねぇんだよ!」
「アッハハ、君の仕事の邪魔を出来た事を嬉しく思うよシズちゃん!」

ブォン、と、音を立てて風を切る道路標識をよけながら、臨也は走る。
そんな臨也を追いかけながら、彼は心中で大きく溜息をついていた。

(あー…どうして俺はこう云う物言いしかできねぇんだ…)

本当は、と、追いかける足を止めることなく彼は思う。

もっと、普通に声を掛けて、普通に話をして、親友とまではいかなくとも、普通に仲良くなれたら良いのに、と。


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