DRRR

□おかえり。
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世界には、自分に似た存在が3つはあるのだと言う。
それならば、知人に似た存在も3つある、と云う事で。

「シズ……ちゃん?」

目の前の、この人物は、自分の天敵ではなく、彼のそっくりさん、なのだろうか……?

合縁奇縁〜君と始める物語〜

金髪と人並み外れた怪力。

そこだけを見れば、目の前の彼は平和島静雄だ。
しかし、服装を見れば、彼は本当に平和島静雄なのかと、首をかしげてしまう。
和服に海を彷彿とさせる碧い羽織。足元はもちろん下駄を履いている。

そして、何よりも違うのは―――

「大丈夫か?臨也」

優しく、柔らかに、【オリハライザヤ】に向かって、微笑んで見せた事だろうか。

◆ ◇ ◆

「え…?えぇ?!」

地面に座り込んでいた臨也に、彼は緩く笑んだまま、その手を差し出す。
その手と相手を交互に見やりながら、臨也は困惑の表情と声を漏らした。

無理もないのかもしれない、目の前の彼は、服装は違えども、見た目は天敵。
常ならば臨也を見ただけで青筋を浮かべてゴミ箱やら自販機やら標識やらが飛んでくる様な相手が、自分に向かって手を差し伸べているのだから。

「どうしたんだ?あ。もしかして、腰が抜けたのか?」

そうではないのだが、臨也は驚愕が勝ってしまい、どうにもうまく返答が出来ない。
そんな臨也に、彼は本当に腰が抜けて立てないのだと判断したらしく、臨也の傍へしゃがみ込み、

「え?」
「相変わらず軽いな。きちんとご飯は食べてるのか?」

ひょい、と。いとも簡単に臨也を抱き上げて見せた。
それも…所謂【お姫様だっこ】と呼ばれる横抱きの形で。

「えっと、あの…」

状況の判断が出来ないと、しどろもどろに言葉を紡ごうとする臨也に、彼は、キョトリとした表情で口を開いた。「もしかして」

「臨也、俺の事…忘れちゃったのか?……まぁ、もう10年近く会ってなかったしな…」

その言葉に、臨也は眉をひそめる。
10年会っていない、と云う事は、この目の前の人物は天敵である彼ではないと言う事だ。
それならば誰だと考えて、臨也はふと、一つの可能性に辿りつく。

7年前、来神学園に入学して、平和島静雄に初めて対面した時に感じた既視感(きしかん)。それは、確か。

「……つが…る?」
「っ!思い出してくれたのか?」

そうだ、目の前にいる彼―津軽―に、静雄が良く似ていたからだったのだ。

「うそ、本当に津軽?!」
「あぁ、つい先週池袋に帰って来たんだ。真っ先に連絡取れたら良かったんだけどな…様変わりしすぎて臨也の家の位置は曖昧で…携帯も、あのころは持っていなかったから知らないし…偶然でも、会えてよかった」

にこりと、本当に嬉しそうに笑う彼は、臨也の幼馴染だ。
幼い頃はよく遊び、良く話した、友達と呼べる存在。
中学に上がる直前に、親の都合で海外へと越して行ったのだが、どうやら帰って来たらしい。

(シズちゃんに似てるんじゃなくて、シズちゃんが似てたんだ)

心中で呟いて、臨也も笑う。

一方的に抱えられていた状態で、空いていた両手を彼の首へ回すと、嬉しそうに口を開いた。


おかえり! (ずっと、本当は逢いたかったんだ)




「それにしても、良く俺だって分かったね?」
「…臨也は、あの頃からあまり変わっていないから…」
「そうかな?津軽もあんまり変わってないよね、相変わらずカッコイイ」
「っ!そ、そうか?臨也も相変わらず…いや、あの頃よりずっと可愛いぞ?」
「え?!イヤイヤイヤ俺は可愛くないって!」
「(耳まで真っ赤にしてる。可愛いなぁ。でも言ったらまた拗ねるんだろうな…)そうか?」
「そうだよ!(今セリフの前に何かついてた様な…?)」


End.


→後書き。

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