DRRR*
□5周年**
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◎来神時代(勿論ねつ造)
◎『至極当然』と同設定。
◎新羅と臨也は同じクラス。静雄と京平は同じクラス。
◎新羅のキャラ崩壊気味注意。
電話口から聞こえた声に、僕は思わず耳を疑った。
「……い、ざや…?今…なんて……」
[だから……暫く新羅とは会いたくないんだってば]
受話器を耳にあてたまま、思わず茫然自失してしまった僕の耳は、「もう良いかな?俺、忙しいんだよね」などと告げてくる臨也の声を受け止めてくれない。
耳から左へと聞き流して、意味がちっとも入らない。
――ハッと気付いた時には、電話は既に切れていて、無機質な電子音だけが響いていた。
◆ ◇ ◆
「しぃーずぅーーおーーーくぅーーーーん?」
昼休み。
ともすれば人一人殺せそうな真っ黒い笑みを浮かべながら、岸谷は俺達のクラスへとやって来た。
まるで、臨也に戦争(ケンカ)を引っ掛ける時の静雄の様な、間延びした、されど迫力のある声で、静雄の名を呼びながら。
「な、何だよ?新羅」
呼ばれた静雄はと云えば、返す声がどもっている。
まぁ…あんな岸谷見りゃ、流石の静雄でも仕方ねえかもしれないな。
相変わらずの真っ黒い笑みを浮かべながら、岸谷はゆっくりと口を開く。
「君…また臨也に余計な事吹き込んだだろ?!」
「ハァ?!」
静雄から、心底意味が分からない、といった様子の声が上がった。
…まぁ、当然と言えば当然か。岸谷の言葉は唐突過ぎる。
不機嫌そうに表情を歪ませながら、静雄は小さく溜息を吐いた。
「…何もしてねえよ」
「嘘だ!!」
間髪いれずに岸谷が静雄の言葉を否定する。
…おいおい、聞いたなら少しくらい信じてやれよ。
しかし…岸谷があそこまで取り乱すなんて珍しいな。…臨也と何かあったのか?
「君が何か吹き込みでもしなきゃ…臨也が私を拒絶するなんてあり得ない!!!」
「どんな自信だ」
思わず、と云った風に突っ込んだ静雄に同感だ。
お前は臨也をなんだと思ってるんだ。恋人か?恋人気取りなのか?
……駄目だ臨也、こんな変態眼鏡が恋人だなんてお父さん認めないからな!
…っは!拒絶したとか、お前まさか…嫌がる臨也に無理やりふしだらな事をしようとしたんじゃないだろうな……?
◆ ◇ ◆
「ここ数日話すらしてねえよ!」
「だったらどうして臨也が俺を拒絶する様な言葉を吐くんだい?!」
「んなもん知るか!」
クラスの注目が自分達に注がれている事になど全く気付いていない様子で、新羅と静雄はいまだに終わりの見えない押し問答を繰り広げている。
そんな二人の間に、今まで二人の様子を見ていただけだった京平が、間に割って入って来た。
新羅の肩へとゆっくりと手を乗せ、声を上げる。
「岸谷、落ち着いて、詳しく話せ。」
優しげに響いて聞こえる声色も、全く笑っていない瞳を見てしまえば、恐怖以外の何物でもなかった。
「き…京平…?目が怖いよ?」
ピタリと静雄への非難を止めた新羅の表情は、僅かに動揺を滲ませていたと云う。
後に、その場にいたクラスメイトは語る。
『来神最強は、もしかすると門田かもしれない』…と。
◆ ◇ ◆
朝、ホームルームを終えても臨也が登校してこない。
(学校だなんて、人間観察にはうってつけの場所、一日だって休むわけにはいかないよね!)
何時だったか、そんな風に楽しげに笑っていた臨也が遅刻だなんて珍しいな、なんて思いながら、一時間目が始まる前の5分休み。
僕は臨也に電話を掛けた。
ワンコール、ツーコール。
[もしもし]
電話の向こうの臨也は、いつもよりも声が小さかった。
寝起きなのかもしれない。
「やあ臨也、おはよう!もしかして寝坊でもしたのかな?そろそろ一時間目の始まる時間だよ」
[……今日は、学校休むよ。]
「えぇ?!あんなに学校大好きな君が休むだなんて…天変地異の前触れかい?!」
思わず大声をあげてしまって、クラスの視線が一斉に此方を向いた。
少し気まずかったけれど、気にせず話を続ける
「じゃ、じゃぁ、帰りに寄っても良いかい?」
[……]
落ちた沈黙。
チャイムが鳴った。
[…セルティは良いけど、新羅は駄目]
「何でだい?!」
[新羅には…会いたくない]
思考が止まる。
今、臨也は何と言った?
「……い、ざや…?今…なんて……」
[だから……暫く新羅とは会いたくないんだってば]
◆ ◇ ◆
「…と、云う訳なんだ。だからてっきり、静雄がまたいらない事を吹き込んだのかと思ったんだけど……」
「何だ、そう云う事か」
事の顛末の説明を受けて、京平はホッとしたかのように息を吐いた。
どうやら、彼の想像した最悪の事態は免れたらしい。
「傍迷惑な…」と小さく呟いた静雄には、災難だったとしか言い様がないだろう。
「ならよぉ、ノミ蟲の家まで行きゃあ良いじゃねぇか。その方が手っ取り早いだろ」
「!」
溜息を吐きながら述べられた静雄の言葉に、新羅は目から鱗と言わんばかりの表情を見せた。
「そうだね!確かにその通りだ。拒絶されたからと云って聞いてあげる礼儀も義理もない。うん、静雄もたまにはいい事言うね!」
「【たまには】は余計だ!」
パ、と、表情を明るくした新羅の言葉に、静雄は「お前は一言多いんだよ!」と吠えている。
そんな二人を見ながら、京平はやれやれ、と溜息を吐いたのだった。
(これでようやく岸谷も落ち着くな。)
そんな安堵感を持って苦い笑みを零していた京平は、次の瞬間、自分の考えが甘かった事を知るだろう。
満面の笑みを浮かべ、新羅は「それじゃぁ…」と、口を開く。
「そうと決まれば、善は急げ!ちょっと今から行ってくるね! 」
「落ち着け岸谷。」
思わず間髪いれずに突っ込んだ京平はさらに続けた。「それは善じゃない。」
全くもってその通りである。
◆ ◇ ◆
「京平、人生において、迅速果断(じんそくかだん)に実行する事は何よりも大切なんだよ」
真顔で吐かれた岸谷の言葉は言葉だけ聞けば真面目極まりない言葉にもとれる。が。
「取敢えずお前はきちんと授業を受けろ」
「えー」
授業をさぼる為に使う言葉ではない。断じて。
「京平は真面目すぎるよ!」とか何とか騒いでいるが、そう云う問題じゃないだろ。
「良いから教室に戻れ」
きっぱりと言い切れば、項垂れながらも岸谷は渋々と教室に戻って行った。
「あー…門田、平和島。話は終わったかね?」
気まずげに後ろから声が掛る。
「「あ」」
……そうだった。
今は5時間目真っ最中だった。
「すみません。終わりました。…ほら、静雄も席に戻れ」
「あ…あぁ、そうだな」
岸谷の事を言えた義理じゃねぇな、俺も。
岸谷の説明の途中でチャイムが鳴ってたのは気付いていたんだが、話の方が気になって、つい授業の事なんて頭から飛ばしちまってた。
でも、先生も声かけてくれればよかったのにな。
…まぁ、最後まで話聞けたから有難いと云えば有難かったけどな。
◆ ◇ ◆
掃除の時間がそろそろ終わろうとしている。
「平和島ー、教室掃除終わったぞ」
「あぁ、分かった」
クラスメイトに声を掛けられて、ゴミ当番だった俺はゴミ箱を持ち上げて焼却場まで向かった。
焼却場は、教室のすぐそばにある。
グラウンドの端にあるよりはましなんだが、教室によっては窓の外の景色が焼却場だったりして、何となく気が滅入る。
片手で焼却場へゴミをひっくり返しながら、何気なく校舎の方を見やった俺は、新羅が窓際で何かしているのを目にとめた。
……あいつ、まだ放課後のホームルーム終わってねえのに帰る気で居やがるな…?
いそいそと鞄に荷物を詰めて、後ろの席の人間に何か言っている。
大凡、「僕これで帰るから、後は先生に上手く言っといておくれよ」とか、そんな所だろう。
「そうはさせるかよ」
思わず呟いて、ごみ受けの中からプリントが丸まった様なゴミを一つ取り出すと、投げやすいように丸めて、思いきり新羅の頭めがけて投げつけてやった。
うまい具合に窓は開いてたしな。
まぁ、言っても所詮紙だし、そんなにダメージはねぇだろうと踏んでたんだが…
「痛?!!え、何これ…紙?!!」
どうやら相当痛かったらしい。軟弱だな、あいつ。
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