DRRR*

□慢心者ニ制裁ヲ。
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それが可笑しなことだとは理解しているよ。
だけど駄目なんだ。

どうしても、止められない。

柄の悪い連中を舌先三寸で言いくるめて、けしかけて。
そうする事で、相手から嫌悪しか得られない事なんて分かっているのだけど。

だけど、止められないんだ。

だって、そうすれば俺に意識を向けてくれるから。

嫌悪でも怨みでも、俺に意識を向けてくれる。

止めてしまったら、きっと俺は、相手の意識から消されてしまう。
目が合うだけで怒鳴りつけられる事も、純粋な苛立ちを向けられる事も無くなってしまう。

それが、凄く、怖くて。

どうしても、止められないんだ。

◆ ◇ ◆


「別におかしなことなんて一つもないんじゃないかな。イザイザ」

とつとつと自分の心中を吐き出してくれたイザイザに向けて、私はいつも通りの声音で告げる。

告げた言葉に偽りはない。
ただ、ありのまま。私の素直な感想を吐き出してみただけ。

「おかしくなんてないよ、イザイザ」

もう一度、言い聞かせる様に。同じ言葉を繰り返す。
私は続けた。「恋って、そう云う物よ」

「そうかな…」

不安げに表情をゆがませるイザイザは、多分すごく珍しい。と、思う。
ここ数カ月、毎週の様に見ている私としては、今のこの表情がイザイザの素なんだと思える訳だけど。

「私だって同じだもの」

呟いた言葉に、イザイザはキョトンとした目で私を見つめる。

「狩沢も…恋をしてるのかい?」

イザイザの問いは、純粋な疑問と興味しか含まれていない様に感じられた。
小さく頷く私の頭の中で、誰かが囁く。
もしかすると、これは大きなチャンスかもしれない。と。

「イザイザに、恋してるの」
「…へ?」

にっこりと、満面の笑みを浮かべながらそう告げた時の、イザイザのあの間の抜けた表情は、なかなかの見物だった。


◆ ◇ ◆


「…狩沢、本当に、俺で良いのかい?」
「勿論」

「俺は暫く引きずるだろうし、すぐには君の気持に答えられないと思う」
「そんなの全然構わないよ」

「もしかしたら、狩沢の事、彼みたいに好きになれないかもしれない」
「うふふぅ、そこは私の腕の見せ所ね☆好きにさせて見せるから、まーかせてっ♪」

「……男前だね、狩沢」
「まぁね。私、イザイザを嫁に貰うつもりだから!」

「嫁……?婿じゃなくて?」
「うん。嫁。旦那は私だから。此処大事」

「本当に変わってるなぁ…狩沢は」

そう言って、柔らかく笑んだイザイザは、今まで見せてくれたどんな表情よりも可愛かった。



まぁ……ねぇ?

シズちゃんがイザイザの事好きだったり、目があってすぐ凶器振り回して追いかけまわしたりするのは、愛情と照れの相乗効果だったりするんだけど、そこは知らない振りをする事にして。

良心が痛まないか、と云えば多少チクリとするけれど。
私とイザイザの未来が幸せであるなら、そんな痛み、微々たるものだよねぇ?

慢心者ニ制ヲ。

(キミにバツを、)


(何時までもイザイザが自分を見てくれる、何て思ってたら甘いんだから)
(取敢えず、少しづつイザイザがシズちゃんにちょっかい出さない様にさせて行こう)

End.



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