DRRR*
□ゲームで臨也君があまりにも(略)
4ページ/5ページ
イザイザが居なくなってから、一週間ほどが過ぎた、ある日。
郵便受けに、一通の封筒が届いた。
真っ白な封筒。
差出人の名前は、ない。
宛名の字にも、見覚えはなかった。
だけど、
【狩沢絵理華様】
筆ペンで書かれたらしい私の名前。
封筒から僅かに香った嗅ぎ慣れた香り。
何より、私の勘が。
この手紙はイザイザからだと告げていた。
「カオル、ちょっと出かけてくる!」
「夕飯までには帰って来てよ」
部屋の奥で動画をとる準備をしていたカオルに声を掛けて、私は家を出る。
逸る気持ちを押さえながら、ドタチンに向けて電話を掛けた。
「もしもし、ドタチン?あのね――」
◆ ◇ ◆
狩沢からの連絡を受けて、いつものメンバーは渡草の車へと集まっていた。
「臨也さんから手紙が来たんすか?!」
驚いた様な声を上げる遊馬崎に、狩沢は小さく頷く。
「それで、居場所でも書いてあったのか?」
次いで訪ねた渡草の質問には、軽く首を振り、狩沢は口を開いた。「実は」
「まだ封、切ってないんだよね」
「「「は?」」」
驚いた様な、間の抜けた声が一斉に上がる。
彼女の手に握られた便箋は、まだ届いた状態のままだった。
「とにかく、読むね?」
ゴクリ、と誰かが息をのむ。
封筒から出てきた、一枚の白い便せんを広げて、狩沢は一度深呼吸をした。
「えぇっと…【拝啓、狩沢絵理華様―――】」
◆ ◇ ◆
拝啓、狩沢絵理華様
突然のお手紙で失礼します。
この手紙を読んでいる、と云う事は、私は貴女を手放す事が出来たのでしょう。
今、貴女との最後のデートの準備を終え、貴女を待ちながらこの手紙を書いています。
初めに。
この手紙はどうか、最後まで読んでください。
そして、読み終えたら捨ててください。
出来る事なら、燃やすか、鋏で刻んでいただければ幸いです。
私は、貴女に非道い事をしました。
仮にも恋人と云う存在であった貴女に薬を盛り、狭く苦しい場所に押し込めまるで物の様な扱いをしました。
言い訳はしません。
謝罪もしません。
貴女は、理不尽だと怒り、私を怨んで構いません。
それほどの事を、私はしました。
ただ、私が筆をとったのは、これからの事について、一つだけ貴女に忠告をしたかったからです。
これから、そう遠くはないうちに、貴女のもとへ、私の居場所を尋ねる輩が来るかもしれません。
「知らない」と告げても、輩はしつこく食い下がり、貴女を追いかけるかもしれません。
貴女に、危害が及ぶかもしれません。
そんな時は、迷わず誰かに助けを求めてください。
決して、一人で立ち向かおうなどとは考えないでください。
貴女を陥れた私の言葉など、聞きたくもないかもしれませんが、どうか。
これだけは守ってください。
私からの要件は以上です。
…嗚呼、最後に、一つだけ。
愚かな男の願いを、聞いてください。
どうか、貴女は―――
◆ ◇ ◆
くしゃり、全て読み終えて、狩沢は手紙を握りつぶした。
小さく震えるその拳に、彼女が怒っているのだと云う事が窺い知れる。
「…ふざけないで」
低く、ドスの利いた声が零れ落ちた。
隣に座っていた遊馬崎の肩がビクリと跳ねる。
助手席で話を聞いていた京平は、苦い笑みを零した。
(臨也、お前は本当に分かってないな)
ポツリと心中で呟いた言葉が、まるで聞えでもしていたかのように、狩沢は言葉を紡ぐ。
「分かってない。分かってないよイザイザ。【どうか貴方は幸せになってください】なんて。イザイザがいなくてどうして実現できるって言うのよ。怨む?怒る?当然じゃない!何の相談もなしに勝手に居なくなって!せめて一言相談して、それから私を連れて行ってよね!」
感情的に声を荒げる狩沢は、しかし臨也の望む様な怒り方をしている訳ではなかった。
どちらかと云うと、「仕方ないなぁ、もう」と云う呆れを含んだような響きを持っている。
「狩沢、どうする?」
ハンドルを握る渡草が、端的に問うた。
その言葉に、狩沢は携帯を操作しながらにっこりと含みのある笑みを浮かべ。
「取敢えず、東口歓楽街行ってみようか、渡草さん」
「了解」
狩沢の言葉に、渡草もまた、シニカルに笑んで見せた。
君に告ぐ。
(このまま逃げられるなんて、思わないで。)
(池袋には、超高性能のイザイザ探査機がいるんだからね!)
「あ、シズシズはっけーん」
「いやはや。【静雄警報】のスレを逆に静雄さん探索に使うとは、流石狩沢さんっすねぇ」
End.
と、言う訳で。(どんな)
書きたいところは書けたので満足(笑)
こっからシズ君があり得ない探査能力を発揮して臨也君発見する訳ですが。
でももし臨也君が海外に行ってたらちょっと探せない気がするなぁ(え)
手紙の中の臨也君は一人称『私』でも良いんじゃないかな、と思った。
ついでに丁寧語でも良いじゃない、と思った。
結果、誰か分からなくなった(オイ)
でも書きたかったんです、狩沢さんにお手紙書く臨也君。