ShoutDREAM

□夢の世界で
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気が付いたら何も無い場所にいた。
真っ暗で、辺りになにも存在しない。
なぜ此処にいるのか、数時間前の出来事を思い出す。
鶺鴒計画の始動によって俺の住む出雲荘には居候が増え、日々笑い声が絶えなくなった。
無論、全員が鶺鴒計画の関係者であるが
その事実をしる者は半数しかいない。
それでも知っている者たちは知らぬ者に話すこともなく。
または鶺鴒計画の関係者ではないと嘘をついて住民と接した。
俺も、無関係者を装っている。
セキレイとして行動しているときの行い的に、ここで正体を明かすのは戸惑いがあった。
明かせば、攻撃を受ける気がしたのだ。
そのため普段何も知らぬ顔をし、なにも感じずに出雲荘で暮らした。
それで、どうした?
何故、此処にいる?
再度辺りを見回す。
何もない部屋で、時間もなにもわからない。
「こんにちは」
そこに、俺じゃない女の声。
先ほどまでは誰もいなかった。
誰かと思い、その声の方を向く。
そこには、1人の女の子の姿。
見覚えのない、知らない人だった。
セキレイかとも思ったが、そんな気配は感じない。
普通の人間だ。
俺は黙って彼女を見る。
「初めまして?それとも久しぶり?」
「・・・何を言ってるんだ?」
彼女は笑って、俺に近づいた。
「私にもよく分からない。」
くるりと、彼女は俺に背を向けた。
「私にもわからない。まだ物語は終わってないから。」
「は?」
「ある人に教えて貰った。此処には私たちの他にも人がいるよ。」
彼女はそう言ってある方向を指さした。
そこには、数人の女子が固まって話をしている。
彼女たちの隣には、どこぞのアニメにいそうな怪物の姿。
「彼女たちは終わったんだって。」
「・・・良く分からないんだが?」
「私もわかんない。」
すとん、と彼女は地面に座った。
普通の床で、定期的な掃除が行われている。
彼女を見習って俺も座る。
「私たちは、ここにしか存在できない。
此処以外には居られないんだって」
「俺の住んでいる場所はここじゃないが。」
「私も此処じゃないよ。でも、此処にしか存在できないって。」
彼女は再び数人の団体を見た。
彼女たちは俺たちに気づくこともなく、3人で笑っている。
「よく分かってないんだ、私も。
私はね、ある組織で歌手として活動してる。
そこで、大切な人たちと一緒にいる。
でも、彼女たちが話すには全部夢なんだって。
本当は、私たちは存在しなくて私のいない世界で大切な人たちは何事もなく過ごしてる。」
彼女はそう言って黙り込んだ。
「俺も、君も、そしてあそこにいる集団も、世界には存在してない、と。
まぁ・・・俺らは此処にいるし住んでる場所にも存在してる。
信じることは、出来ないな」
「だよね、・・・うん。
ねぇ、貴方の世界の事を教えて?
私の世界の事も教えてあげるから。」
彼女はそう言って、話し始めて
俺もそれにつられるようにセキレイのいる俺の世界について話した。
彼女の世界には、妖精とも言える生き物がいる。
しゅごキャラ、なんて俺は全く知らない。
彼女もセキレイの事を全く知らないようだったが。
「面白いんだね、貴方の世界。」
「そっちもね。知らない単語出てきたし。」
しばらく話して、ある程度の区切りが付くと彼女は立ち上がった。
「たぶんね、貴方はすぐに帰ると思う。
私はしばらく此処にいるかもしれないけど・・・がんばってね。」
そういって、彼女は俺の元を離れる。
「ちょっ」
立ち上がって追おうとしたとき、辺りが暗くなった
彼女も、先ほどまでいた3人組の姿も見つからない。
先ほどまでの空間などは一体なんだったのか、それを考える時間はなかった。


目覚ましの音が一室に響く。
「・・・ん」
もぞもぞとベットの中でうずく。
カーテンから日の光がさしこみ、見事にベットの方に光を送っていた。
時計を見ると時刻は7時。
目覚ましの音を消すと、再び毛布に潜る。
1階では他の住民たちの声が響いている。
「・・・まだ寝てるの。」
ノックもなく開かれたドア。
そこには出雲荘の住人の姿。
「ほら、起きて。」
「んー・・・ かがり?」
潜っていた毛布から顔をだす。
「準備できたって。美哉が呼んでるよ」
「うん。」
まだ眠いが、美哉に呼ばれているのなら仕方ない。
もぞもぞとしながら起き上がる。
「着替えて出てきてよ」
「わかってるって」
ベットから起き上がって適当な服に着替える。
そしてふと、あの夢を思い出した。
いや、もしかすると夢じゃないかもしれないが。
「なぁ篝。」
「なに?」
律儀にまってくれている篝に、あのとき彼女が言っていた疑問をぶつける。
「俺はここにいるよな?」
「変な夢でも見た?ここにいるだろ?」
「だよな、いや・・・なんでもないや。」
着替え終えて篝のほうへいく。
「一体どうしたの?」
「ちょっとある女の子の疑問を、ね」
「は?」
「なんでもないって。早くいこ。」
篝がとまどっているのを背後で感じながら、俺は自室を後にした。
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