勇者文章

□特別な日(裏編)
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「しっかし、ケーキとビールってあわねえな」
ケーキをぱくつきながら、鋼野は文句を言う。

「コーヒーでも煎れるか?」
鋼野は立ち上がろうとする槍崎の左手を掴んで引き止めた。
その左手には、先程鋼野があげた青い石の指輪が光っている。

「いいよ、別に」
「でも、少しは酔いも冷めるだろうし…」
「いいっての。それよりさ…」
そのまま手を引くと、バランスを崩した槍崎は鋼野の腕の中に倒れこんだ。

少しの間ぎゅっと抱き締める。
少しクセのある柔らかい髪に顔を埋めると、槍崎の匂いがした。

そっと引き離し見つめ合うと、どちらからともなく唇を重ねる。
最初はついばむように、それが徐々に深くなっていく。
堪らなくなってきて、鋼野はそのまま床に槍崎を押し倒した。

「んっ…。はがね…の」
唇が少し離れたところで、槍崎は口を挟んだ。
「ん?」
「せめて、ケーキ食べてからにしない…か?」

「だめ。もうスイッチ入ったし。止まらねえ」
ぐいと槍崎の上着に手をかけ、肌けさせた。
剥き出しになった肩口に顔を埋める。
手は上着の下の素肌をまさぐっていた。

「鋼…野。さすがにここじゃ…。ベッドに行かんか?」
固い床の上では、背中が痛かった。
「いちいちうるせえ野郎だな。たくしょうがねえ」

鋼野は立ち上がると上着を脱ぎ捨て、ベッドに腰下ろした。
「ほら、こいよ」
呼ぶと槍崎も立ち上がり、ベッドに近づく。

ベッドに腰かけ待っている鋼野の態度と目の色から、求められていることを見てとり槍崎は軽くため息をついた。
長い付き合いのなせるわざか。
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