勇者文章
□もう一度はじめよう!
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「槍崎先生、これどうぞ」
「え。いいのかい」
三人の女子生徒に囲まれていた槍崎は少し頬を赤らめて、
差し出された小さな包みを受け取った。
今日は、2月14日。
バレンタインデー。
朝から学校中の空気が、いつもとは違っていた。
最初はこの浮かれたような雰囲気を楽しんでいた鋼野だったが、時間がたつにつれだんだんと不機嫌になっていった。
チッと廊下をドスドスと歩きながら舌打ちをする。
ガキどもが色気づきやがって。
だいたいなんでオレのところにチョコが1つもこない?
まったく、最近のガキどもは見る目なさ過ぎるだろ!
まあ、勇者は孤高の存在だからな。
気後れするというのもわかるが。
などと、勝手な解釈をしていたのだが。
目の前の光景に、怒りが沸点に達した。
槍崎は少し困ったような、それでいて嬉しそうに
チョコを受け取る。
「じゃあ先生、また手品見せてくださいね〜」
そう言いのこして女子生徒たちは、鋼野の横を通り過ぎて行った。
「い、いや、あれは手品じゃなくて魔法…」
気弱な槍崎の言葉はもう彼女たちには届かなかった。