家宝

□嫌いの裏側
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面倒な二人?そんな事いわないで、これでも愛してるんだから!



嫌いの裏側



人間、人それぞれに感覚や考え方は違う。環境が違うのだから、違う環境で育った人を完全に理解せよなんて不可能な事なのだ。
黒子は高尾の事が本当に理解できなかった。初対面で肩を抱かれ、対戦したときには同族嫌悪発言。予選が終われば、練習試合でもない限り、もう会わないだろうと思っていた。

が、どこでどうなったのか現在、付き合いがある。黒子から交流を求めた事は無い、高尾が何かと構うのだ。

「ボクだって嫌いです。嫌いだと言いながら近寄ってくる相手の事なんて分かりません。」

「なら、相手にしなければいいんじゃねーの?ミスディレクションがあるだろ。」

「何度もそうしました、しかしミスディレクションが効かない人ですからすぐに捕まってしまうんです。」

部活帰りによく立ち寄るマジバーガーで、相棒の愚痴を聞く火神。二人に恋愛感情は無く、友愛であったり尊敬であったり信頼であったり、そういうもので結ばれている。始終べったりではないが、よく一緒に居る相手だ。
マジバーガーで部活後の空腹を紛らわすのはお決まりのコースになっている。相変わらず黒子はバニラシェイクを、火神はハンバーガーの山をトレイにのせて席についた。

「でも、憧れています。高尾君は強豪校でレギュラーになれる実力の持ち主です。ボクとは違って体力があって、社交的でチームに早く馴染めるでしょう。」

と、珍しく口数が多い。彼はよく喋る方ではない、少し離れた位置から観察し、ある程度の距離を取る。その距離をひょいと軽く越え、どこにいたって見つけてしまう目を持った高尾。
同じパスをまわすのを生業とするからこそ、意識してしまうのだ。そこら辺は自身でも自覚している。

似ているから気になり、つい比べてしまう。それは好敵手と見るからなのか、別の感情によるものなのか、影の薄い少年は言わないが掴んでいる。
高尾が嫌いと言い続ける限り、好きだと言ってやら無いと意地になっているだけだ。


オレは黒子が嫌い、と高尾はよくこぼす。緑間は最初、総合的に見て負ける要素は無いのに黒子が勝ったからだ、と思っていたが違うらしい。
嫌いだ嫌いだ、と言っているが黒子を見つければちょっかいをかけに行く。黒子が立ち寄りそうな場所の近くに行くと水色の色彩を探す。
嫌いなら避ければいい、会いたくないなら探さなければいい。だが、そうしない。自分から寄って行くのだ。

「どうしたいのかオレには理解できん。」

「嫉妬?大丈夫、真ちゃんもかまってやるからさ。」

「嫉妬などするものか。嫌いなのだろう?」

「ああ、嫌いだね。」

と、隠す様子も無い。

キセキの世代が黒子を気にかけるのは認めているからだ。あの強さは尊敬に値する。
点は取れないが、点を取らせる事にかけては右に出るものはいない。チーム自体の強さにもよるが、攻撃力を飛躍させる事が出来る。
黄瀬は海常に引き入れようとした、緑間はもっと強い高校が相応しいと考えている、青峰は彼のためなら怒る。

高尾が気にかけるのは、そういう要素ではない。相手の弱点を探ってやろう、という意図で近づいているのではない。
そう来ると緑間は理解不能だ。このようなタイプは付き合った事が無い。

「無表情で感情が読めない所が嫌い。綺麗な目は真っ直ぐで、折れない所が嫌い。オレはすっごく思ってんのに全部伝わってない、この思いに答えてくれないんだぜ?可愛げのないヤツ、ちょっとは振り向いてくれたっていいじゃん。甘えてくれてもよくね?」

「それは、つまり…。」

「好きだよ、でも答えてくれないから嫌い。でもそんな黒子も愛してる。こんなに夢中になってんのに、相手は余裕でいられるなんて嫌だね。だから嫌いって追い詰めてやろうと思ってさ。
余裕なんて無くせばいい、オレの事ばかり考えればいい。」

真ちゃんでも譲らないから、とさらりと宣戦布告をする。口からでる言葉とは正反対の、清清しい顔をしていた。

(ああ、なんて面倒なんだ。)

高尾も、高尾をこうさせた黒子も、なんて面倒な人間なのだと緑間は渋い顔をする。
少し理解できてしまいそうな己もいるが、関わりたくない。

高尾少年には幸いな事に、愛しの少年は高尾の策にはまっている。気配に敏感になり、見つかりそうになると逃げようとしている。しかし、漆黒の瞳からは逃れられないのだ。
今だってそう、余計なのがついているが黒子を見つけて近寄っていく。放置できず、緑間は自棄であとを追った。


 

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