家宝

□11月11日
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 火神の部屋に泊まりに来ていた黒子。火神にココアを作ってもらっている間、自分はコタツでテレビを見ていた。すると、番組の間のCMで、女の子がポッキーを持っていた。

『今日はポッキーの日です』

そう言って女の子は、好きな男の子にポッキーを差し出していた。

 そのCMを見て、黒子はカレンダーを見た。確かに、今日は11月11日。ポッキーの日である。

 しかも、今日はなぜかコンビニでたまたまポッキーを買っていた。特にイベントが好きというわけではないが、火神に甘える絶好の機会である。
そう思うと、黒子は早速コンビニの袋を漁り始める。そして、目当てのものを見つけると、火神がココアを作って戻って来た。

「黒子、ココア作ったぞ。火傷しないようにな」

そう言ってコトリと、マグカップを置く火神。そんなことを言っているが、火傷をしない温度になってからしか持ってこないことを黒子は知っていた。いつも飲むのに丁度いい温度なのだ。

 そんな優しい火神に、黒子は持っていた袋を開けて、ポッキーを口に咥えた。

「かがみ、くん…」

ん。
と、ポッキーを突きだす黒子。
それを見て、火神は目を見開く。
しかし、次の瞬間口端を持ち上げて、黒子のポッキーを手で取ってしまった。

「あ」

やりたかったことを理解してもらえなかったのかと、拗ねようとした時、ふいに火神が顔を近づけてきた。

「か、んっ…ふ…んちゅ…っ…」


火神と呼ぶ前に唇を奪われる。

 優しいキスではなく、深く繋がるような激しいキス。
舌を入れられて、絡められる。呼吸するのも許さないかのようなキスに、黒子は苦しくて、だけれど嬉しくてやんわりと火神の服を握りしめた。

 そんな黒子に、火神はまだ足りないとでもいうように、口付ける。啄ばむように吸って、舌を絡めて、黒子を追い詰める。

 黒子の口端からは、雫が溢れた。

「ん…んんっ…ふぁ…んっ!」

時折甘い声を漏れさせながら、黒子は火神に口内を蹂躙される。

 ようやく放された時には、黒子は腰が溶けてしまっていて、力が入らなくなっていた。

 火神は、黒子の口元を拭うと、ちゅっと髪にキスを落とす。

 火神の突然のキスに、黒子はなぜかと尋ねた。
すると。

「ポッキーなんか使わなくたって、キスぐらいしてやるよ」

して欲しかったんだろ?と、逆に問われて、黒子は何だか悔しい気持ちになった。

 だから、「違います」と答えて、火神の作ってくれたココアを飲む。そんな黒子を、クッと笑うと火神は黒子の髪を撫で始めた。その優しく梳くような手つきに、黒子はポツリとつぶやく。

「キス、して下さい…」

その言葉を、傍にいた火神が聞こえないはずもなく。火神は黒子の顎を掴むと上を向かせた。

「分かってるよ、お姫サマ?」

そういうと、火神は黒子の唇にそれを重ねた。




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