家宝

□猫と煙
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帝光時代、高尾も帝光にいるパラレルです。
高vs黄→黒。
稚嘉さんへ捧げます。











「なー涼ちゃん。いい加減クロちゃんの事諦めたら?」
「それはこっちの台詞っスよ高尾っち」
心地のいい風が頬を撫でる第四校舎の屋上で、黄瀬と高尾はもう何度目かになるか分からないやり取りを繰り返した。
「最初にクロちゃんの事好きになったのはオレじゃん」
「愛を育むのに時間は関係ないんスよ。オレの方が黒子っちの事好きだし、絶対高尾っちより好かれてるもん」
「ははは、それ妄想じゃね?」
軽く返された高尾の言葉に、黄瀬は口を尖らせる。
「高尾っちは緑間っちとでも付き合えばいいんスよ。仲良しじゃん」
その言葉と共に横の高尾の体にもたれかかった。支えてくれるだろうと考えての行動だったけれど、高尾は黄瀬の重みに逆らわずそのまま二人して床に寝転がる体勢になってしまう。
「真ちゃんとかあり得ないっつーの。大体オレ男が好きってわけでもないし、クロちゃんが好きなの。涼ちゃんだってそうだろ」
「・・・そうっスけど。あーあ、高尾っちと趣味合いまくるのはすげー嬉しいけど、これだけは合わなくても良かったのに」
「何がですか?」
突然頭上からかけられた聞き覚えのある声に、黄瀬は顔を上げた。さらさらと風に合わせて空と同色の髪が揺れている。
「お、クロちゃんオレの事見つけるの早いねー」
「違うっスよ、オレを探してたんスよね!」
「二人まとめてですよ。あの問題児は一緒にいるだろうから探してきてくれって。先生方が揃って職員室で待っているそうです」
「げ、どれがバレたんだろ」
「そんなに心当たりがあるんですか・・・キャプテンもお説教が終わるまで部活には参加させないって言ってましたから早く終わらせてしまいましょうね」
小さな溜息を吐いた黒子が黄瀬と高尾に向けて両手を差し出す。
その意図を汲んだ二人が差し出された手を握るのと同時に上へと引っ張られる。けれどそれ以上に強い力で下へと引かれ、黒子は二人の間へと倒れ込んだ。
「っ・・・あぶないじゃないですか」
「だーいじょうぶだって、クロちゃんに怪我なんてさせるわけねーじゃん」
「黒子っちの事はオレらが守るからね」
倒れ込んだ黒子の下には、握られているのとは反対側の二人の手。顔を上げた黒子は騎士のように己を見つめる二人を見て眉を寄せた。
「ボクのことじゃなくて、君たちの手の話です」
こんな事で怪我なんてしたら本気で怒りますよ。と窘めるように続ける黒子越しに、黄瀬と高尾はぽかんと互いの顔を見つめあった。
次の瞬間盛大に笑い出した二人を今度は黒子がきょとんと交互に見やった。
「あー・・・やっぱ黒子っち好きっス」
「ほんとクロちゃんっていいな、オレも大好き」
「な、何ですか二人とも・・・」
「「何でもなーい」」
ちゅっと音を立てて掠めるように黒子の頬に唇を寄せ、二人は立ち上がった。
「じゃあちゃっちゃと叱られてきますか、早くクロちゃんとバスケしたいし」
「そっスね、わざわざ黒子っちが呼びに来てくれたんだからそれに報いないと」
繋いだままの手を引いて未だ固まったままの黒子も立ち上がらせる。
「じゃあまた後でね黒子っち」
「体育館で待っててな」
「今日はもう来なくていいです、叱られたらそのまま帰ってください」
ようやく自由になった両手で頬を押さえ黒子が二人を睨みつける。
「またまた〜、オレらに会いたくて学校中探したんだろ?」
「探してません、君たちのいそうな所なんて大体想像がつきますから」
「え?」
「だって」



頬を押さえていた手を胸の前で組み、黒子は口を開く。
「馬鹿と煙と猫は、高い所が好きだって言うでしょう?」















 
 

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