復活
□一方通行、障害物あり
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『オレ、おとーさんとけっこんする!』
『よーし、じゃぁおとーさんはツナを嫁に貰ってやる!』
『こらあなた!いくらツっ君がかわいいからって女の子扱いしないで!ツっ君?ツっ君は男の子だからおとーさんとは結婚できないのよ?』
『じゃぁおかーさんがおとーさんとけっこんできるのは、おかーさんがおんなだから?』
『そうね。あと元々他人…まぁ、これはまだいいわね。とりあえず結婚できるのは男の人と女の人だけなの。』
『奈々!まだ子供なんだからいいじゃねーか!ツナは俺の嫁だ!』
オレがまだ小さな頃の、父さんと母さんとの会話。
今思えばなんであんなダメ親父と結婚なんて言っていたのか理解できないけれど、その頃は男だから女だからと考える事なく、「好きな人とすることが、結婚。」そう、考えていた。
別にその考えが影響って訳じゃないし、オレも好きでこうなってる訳じゃない。
…それでも、オレが“異常”だと気がついた時には、もうどうしようも無かった。
初めて、恋愛感情として人を好きになったのは、小学校5年生のときの、クラスメイトの“男子”だった。
かっこよくて、足の速い男の子だった。クラス1かわいい女子とよく一緒にいて、その女子と一緒にいるところを見るたびにオレはなんかもやもやして、苦しくて、それで好きなのだと自覚した。
―――自覚して、絶望した。
もうオレも常識が分らないほどの子供では無かった。女子がよく誰が好きだなんだと話しているのを聞いた事だってあった。
自覚した途端に失恋して、そして自分は異常な人間なのだという事まで自覚してしまった。
ただでさえドジで人に好かれないオレが、しかもホモである事まで知ったらみんな余計に離れてしまう。一人に、なってしまう。
(やだ…、一人、やだ…!)
だから、オレはこのことを絶対にばれないようにしようと誓った。
中学に上がって、女の子を好きになろうと努力し始めた。そこで、学年1かわいい女の子を好きだと自分に言い聞かせた。
「オレは、京子ちゃんが好きなんだ。」
声に出して、言い聞かせて、1年の終わりになれば、まるで本当に自分は京子ちゃんが好きなのだと思った。自分は、正常な思考になったのだと、喜んだ。本当に、京子ちゃんを大切な存在に思った。
……なのに。それが覆されていく。
リボーンが来てから、女子に人気な獄寺君、クラスの人気者である山本、京子ちゃんのお兄さん、そして風紀委員長の雲雀さん。そんな今までのオレだったらかかわる事すらないような人たちと親しくなっていった。
もしまた好きになったらと思うと怖くて男友達が作れなかった。それ以前ドジでダメ人間なオレなんかと友達になってくれる人なんかいなかった。(オレにとっては好都合だったけど。)
だけど、友達ができて、本当に幸せで、なんで今まで友達を作らないようにしていたのかすっかり忘れていたんだ。
「ツナ!」
いつのまにか。
本当に、いつの間にかオレは無意識に山本を目で追うようになっていた。
山本がオレと一緒にいてくれる事が嬉しかった。山本のちょっとしたスキンシップにドキドキした。遊びと思ってても、獄寺君とオレの右腕の座を争ってくれてすごく嬉しかった。
…山本に呼ばれる『ツナ』って言葉は、他のどんな言葉よりも、特別になった。
そのことを自覚した。
気が付いてしまった。
(山本が…好きだ……)
自覚してしまった。
気が付きたくなかった。
気が付いたときにはもう忘れてしまう事なんかできない程に気持ちは育っていて、気持ちを無かった事にすら出来なかった。
(馬鹿だ…オレ。わかってたのに、だから、ずっと一人でいたのに…)
分かっていたのに。
男しか好きになれない自分が誰かに恋をすることは、異常で、ただただ苦しいだけなんだ。
この恋は、失恋すら出来ない、秘密の恋なのだから。