復活
□笑顔でさよならするつもり
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今年も入学式がやってきた。
新品の制服に身を包む草食動物の群れ。
また風紀委員の活動が忙しくなるな……
そんなこと考えながら、ふと、目に止まった
綺麗な琥珀色の瞳の
一人の新入生。
僕はまだ知らなかった。
この、名前もまだ知らない一人の新入生が、僕の人生において
とても大きな存在になることを……
この胸の痛みはきっと
僕は入学式を終えて、下校している新入生を応接室から見ていた。
何故だが、朝見かけたあの子の事が気になって仕方ない。
で、見つけた。
一人で帰っていた。
ふわふわと揺れる髪、くりくりした瞳、小柄な背、まるで女の子みたいな容姿の少年。
正直言って、正しく"草食動物"って感じなのにな…
じっと見ていた時、ふっと、彼が立ち止まった。
瞬間、丁度僕の方へ向かって振り向いた。
「!?」
びっくり、なんて優しいものじゃない。
一瞬、心臓から時間から何から全てが止まったような錯覚に陥った。
───ぺこっ
彼は僕のいる方へ向かってお辞儀をした。
多分、僕が見ていたのに気が付いてか、単に目が合ったためかの、ただの偶然。
僕はつい、彼につられて、小さくお辞儀をした。
(……何やってるんだ…僕は、)
並盛の支配者である僕は、お辞儀をされることは多々有れど、したことなんて無かったのに…。
その時、彼はにこっ、と僕に笑いかけた。
その笑顔は周りに咲き誇る桜をも霞ませる程に綺麗だった。
僕は彼から目が離せなくなっていた。