06/21の日記
23:32
保神:諦めましたよ、どう諦めた、諦めきれぬと諦めた(藤アシ)
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※高校3年の受験生の二人
ずっとずっと、それこそ初めて会ったときからずっと好きで。
諦める事には慣れてるはずだったのに。
―――オレはもう5年間も、諦めきれずにいる。
高校生になって3年目。その春にはアシタバとオレは18歳になった。
そしてオレの誕生日が過ぎてから、藤家のオレの婚約者話への力の入れ方が一層強くなった。
それに抵抗する事も面倒になって、でも興味なんかどうしてもなくて。
そんな風になぁなぁで逃げて逃げて。もうすぐ、受験。
「…藤くん、結婚相手もう決まった?」
「しらね。オレはそんなの興味ねーから…。それよりもアシタバと同じ大学行こうと思ったらオレ国語やベーんだよ。そっちのが今心配。」
「それもそうかもだけど…でも、藤くんが興味なくったって藤くんのお家の人は必死なんだから。」
「だから、こんな大事な事を決める事までめんどくさがっちゃ駄目だよ。」
放課後の教室。
もうすぐ受験だからと職員室へと駆け込む生徒や、図書室へと勉強しに行く生徒。学校は騒がしいと早々に帰宅する生徒。そいつらが教室からぞろぞろと出て行って。
そんな中で、オレとアシタバだけが残された教室。勉強道具の広げられた机ひとつはさんで向かい合って交わされる会話。
「…いや、そんなんじゃなくて…まぁ、もう抵抗するとか諦めただけ。」
「またそんな事言って…、でも、僕は…藤くんに諦めて欲しくないよ。自分の幸せな未来を選ぶ事位諦めないでよ。」
「…いっちょまえに偉そうな事いえるようになったんだな〜あのアシタバが。」
冗談めいた風にそうつぶやいて、その小さな頭をぐりぐりと撫でる。中学の時とかは恥ずかしがって抵抗してたのにさすがに何年も一緒にいるだけあって慣れたのか、もうされるがままに撫でさせてくれるようになった。
でもちょっとくすぐったそうに身じろぎするのは変わらない。
「ねぇ、藤くん。」
「何… ?」
「藤くん、…藤、くん……」
「……アシタバ?」
様子がおかしいアシタバの顔を覗き込んで見て…思わず固まった。
「…な、んで、泣いてんの…?」
しかも、笑いながら。
顔は笑顔の癖に、目からはとめどなく涙を流しているアシタバ。一体どうしてこんな事になったのかわからなくて動けないオレに、やっぱり泣きながら笑って、言うんだ。
「藤くんには、絶対内緒!」
その笑顔が綺麗だった。
涙でぐちゃぐちゃな顔なのに、今まで見たアシタバの笑顔の中で一番なんじゃないかとさえ思うほど、綺麗だった。
「…な、んだよ……ケチ。」
「はははっ!」
そのとき、オレは涙の理由を聞かなかった。
アシタバが内緒だって言うんだから、内緒なんだと。
…でも、それを後悔したのはその1ヵ月後で。
―――アシタバの志望校の大学に、アシタバの姿は無かった。
担任に聞けば、そもそもここを受験すらしていないと言った。
『藤くんには、絶対内緒!』
「……内緒って、これかよ……」
伊達に長い片思いしてきたわけじゃない。
だから、なんでアシタバがオレに志望校とか嘘ついたのかとか…なんとなく、分かってる。
(あの察しの良いアシタバが、オレの気持ちに欠片も気がつかないとか…ねーんだよ。)
アシタバの性格を考えれば、きっとオレの為なんだろう。
…オレのこの気持ちに答えれないから、とかじゃないと、思う。いや、思いたい。
「馬鹿アシタバ…本当に馬鹿だよ……郁っ!」
お前、オレの事勘違いしてんだよ。
オレは、諦め癖がついてんだ。
「もう、オレ諦めてんだよ。」
―――お前の事を、諦める事に諦めた。
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チャットで藤のために消えるアシタバとそれを追いかける藤の話が出て、切ない藤アシっていいよね!って話がでたので書きました。
タイトルは有名な都々逸。
しかし今週のジャンプを読む前にこれ書いたけど、読んだ後にこれよみかえしたらアシタバの切なさが倍増した件について。
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