07/19の日記

04:10
黒子:恋人ごっこ(黄黒→←赤)
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※赤司はほとんど出てきません。











オレの大好きで大好きでどうしようもない人は



…オレ以外に、大好きでどうしようもない人がいる。





【恋人ごっこ】



中学3年の時、駄目元で黒子っちに告白した。
そしてやっぱり断られた。

その二日後、また告白した。
やっぱり、断られた。

その翌日、また告白した。
断られた。


でも、3回目の告白ではオレは引かなかった。


「どうしても駄目っスか?」

「君も大概しつこいですね。僕はあと何回断れば気が済みますか?」

「オレが男だから?」

「…別に、同性愛に偏見を持っているつもりはありませんよ。でも僕は黄瀬君を恋愛対象として見れないだけです。」

「どうすれば黒子っちの恋愛対象になれる?」

「そ、……知りません。」


何か言いかけて閉じられた口。そらされた目。
ずっと見てきた、好きな人のちょっとした異変。

そして残念なことに、こういうことには結構察しのいい自分。


「…黒子っち、好きな人がいるんスよね。」

「!」

「ねぇ、でも告白してないってことは、望みが無い人なんでしょ?だったら、オレをその人の代わりにしていいんスよ。オレ、人の真似は得意なんスから。」

「どういう…、」



「黒子っちの好きな人の代わりでいいんス。誰にもばれないようにしてもいい。二人っきりの時は黒子っちの好きな人になりきったっていい。だから、“オレの恋人”に、なってください。」


目の前の彼の顔がとても悲しげに、でも瞳の奥の少しの期待を隠しきれずに、表情をゆがめる。



「…黄瀬、く…」


オレは、ここから、自分の首を絞め始める。



「…泣かないでくれ、テツヤ…」

「!!」

「僕は別にテツヤを泣かせるつもりで言ったわけじゃないよ。」


声や身長はどうにもならない。それでも、アイツの独特な空気や口調や、ふとした時の、アイツの彼への触り方。それぐらいは真似できる。

黒子っちは、さらに泣き始めた。
好都合だ。

視覚が消えた方が、アイツに近づく。


「…愛してるよ、テツヤ。」


オレは泣き続ける彼の頭をそっと撫でる。
その撫で方すらも、アイツと同じように。







あの日から、黄瀬君はずっと僕の横にいた。

黄瀬君はずっと、僕の恋人の“赤司君”として、いてくれた。

他の人の目があるところではただの友達。二人だけの時には、黄瀬君はずっと赤司君として僕に接した。
外見や、声や、身長や、違うところはいっぱいある。なりきれる訳ない。それでも横にいる“赤司君”は、確かに彼そのものであるかのような空気に、喋り方に、触れ方をしてきた。

僕はそれに甘えていた。
男同士とか、高校が離れ離れで遠いとか、振られてかつての仲間ですらもいられなくなるのが怖いとか、そういったくだらない言い訳を自分にして、ずっとずっと黄瀬君に甘えてきた。



高校2年の冬。
本当の赤司君に、一緒の大学に行こうと言われた。

嬉しかった。本当に嬉しかった。僕は舞いあがって、赤司君にそう言ってもらえた事を黄瀬君に話した。
その翌日から、“赤司君”は僕といるとき、殆どの時間を一緒に勉強する事に費やした。


「…そろそろ休憩にしませんか?」

「それはもっと正解率を上げてからいいなよ。僕が受かってテツヤが落ちた、なんてことになっても知らないよ?」

「う…が、がんばります。」

「そうそう、その意気だ。…………がんばれ、黒子っち。」

「!……はい、ありがとうございます、黄瀬君。」

「僕といるのに他の男の名前なんか呼ぶなよ、テツヤ。嫉妬させたいの?」

「いえ、すみません。」



僕と二人でいるときに“黄瀬君”にもどったのは、この一言が最初で最後だった。





志望校の大学に合格して、春から赤司君と一緒の大学に通えることが決まった。

その合格発表の日、僕は赤司君に告白された。

返事は、保留にした。




告白されたことを黄瀬君に報告した。

僕はまるで当たり前のように、黄瀬君なら祝ってくれると思いこんでいた。

―――ずっと、“赤司君”でいてくれたから、

―――ずっと、僕の恋を応援しているようにしか見えない行動を取っていたから、



「…あんまり、僕を待たせないでくれよ、テツヤ。そんなに気が長い方じゃないんだから。」



黄瀬君は“赤司君”としてそう言うと、軽く手を振って僕から離れた。




その日の夜、黄瀬君からシンプルなメールが送られてきた。



『ありがとう、黒子っち。』




僕はすぐにメールを返した。
そのメールは、送り先に届かずに僕の携帯に戻ってきた。

その日から黄瀬君に会えなくなった。







大学生になった春。
僕の横には、本当の赤司君がいる。


そして僕の携帯には、常に未送信のメールが1件だけある。





『宛先:黄瀬君

件名:Re:

本文:
ありがとうございます、黄瀬君。

また明日、会いましょう。』



このメールを見るたびに、僕は黄瀬君のあの時の言葉を思い出すんだ。



最初で最後の、僕の恋人だった黄瀬君の、





『がんばれ、黒子っち』








泣き出しそうに、笑った顔を。



☆コメント☆
[花南] 05-19 17:37 削除
せ、切ない(;_;)
あなたの書く病み黄→黒も好きですが切ないのも好きです!
黄瀬くんは一方通行な感じがいいです

[なな] 07-01 03:15 削除

号泣です
凄い作品です
感動しました
黄黒好きです!!

[天羽] 07-20 02:37 削除
切ない!
泣いちゃいました(´;ω;`)ブワッ

[夏野] 06-18 21:18 削除
切なすぎて胸が熱くなりました…泣ける(ρ_;)

[ちるま] 09-21 20:27 削除
本当は赤黒ですがこれを読んでから黄黒をというか黄瀬君を応援したくなりました。素晴らしい作品ありがとうございます(´;ω;`)

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