08/27の日記
17:09
復活:10年前の約束(ヒバツナ)
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※パラレルです
僕が彼に出会ったのは5歳の頃。並盛神社にふと立ち寄った時、彼は一人木に寄りかかっていた。
彼は薄い山吹色の着物を着た、中学生ぐらいに見える少年。何をするでもなくただ木によりかかっていた。
今思えばこんな時代に祭りでもないのに着物を着るのは珍しいし、ただぼーっとしているのも怪しい。
でも僕も普段着が着物(この時は)だったし、彼の醸し出す儚げで透き通った雰囲気に僕は警戒心を解いた。
「一人で何してるの。」
「っ……き、木々の声を…聞いてました。」
僕が話かけると、彼は驚きの表情を見せた後に、よく判らない答えを返した。
「?木は喋らないよ?」
「あ、そう、ですよね…ははは…」
笑ってるけど、残念というか、悲しそうに見えた。僕は当たり前の事を言ったつもりだったのだが…
「……もしかして、君は木の声が聞こえるの?」
5歳の僕が出した一つの可能性に、彼の表情が変わった。
「う、うん!聞こえるよ!!今日は3日ぶりに晴れたから嬉しいって!でもやっぱり暑いのは大変だって……ってごめん。一人興奮しちゃって…。」
「別に構わないよ。ふーん、本当に聞こえるんだ?じゃあ、この木は、なんて言ってる?」
聞きながら、彼が見えない角度で木の幹に爪を立てた。
「ん?……別にその位痛くないよって。リスたちの方がよっぽど爪を立てる。って。」
「…ワォ。本当に本当だったんだ。」
「ふふ…」
少し照れぎみに笑う彼は、日の光に照らされてまるで消えてしまいそうなほど綺麗だった。
(続く)
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