01/31の日記

00:17
黒子:約束の指輪(黄黒・黒子誕)
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※名家の妾の息子黒子と下っ端の使いの息子黄瀬とのお話。パラレル注意報












僕はいらない子供だった。

実の父親に、面と向かってそう言われたから周りの人間が言っても反論できなかった。

僕は一人だった。


…僕の横には、いつも金色の彼がいた。



【約束の指輪】



「汚いどこの馬の骨かもわからない女の血を持ち込んできて…。」
「ああ汚らしい。もう奥様も息子様をお生みになって今年で3歳ね…はやくあれが家を出て行ってくれればいいけど…」
「本当に。あれは坊ちゃまの成長の邪魔になるだけよ。」

家の玄関を開ける前、中からひそひそとそんな言葉が聞こえる。彼女ら召使が話してるのは僕のことだ。

僕の母は父とはたった一夜の関係だった。そこで子ができてしまい、仕方なく引き取られたのが僕。この家にとって僕はただのお荷物でしかない。それは母が死に、黒子の姓を名乗れなくなった5歳の頃からちゃんと自覚している。


(言われなくても出て行けるようになったらすぐにでも)

「出て行ってやるのにね。」


僕の考えを読んでいたかのようなタイミングで続きをつむいだのは黄瀬涼太。ただ一人の、味方。


「黄瀬くん。聞こえたらどうするんですか。また殴られますよ。」

「いいっスよ。いまさら。さ、あんな奴らの無駄話のせいで余計に冷えたっス!はやく部屋に入ろう、黒子っち。」

「…はい。」


僕を黒子っちって呼ぶのは涼太くんだけだ。それもさすがに家の中ではテツヤ様って呼び方をせざる終えないが、外や人目がないと彼だけはそう呼んでくれる。
僕の母の名前。たった5歳までだったけど、たしかに僕の名前。この家を出たら、ぜったいにこの名前に戻すと決めている。


「…ただいま帰りました。」

「あ、…お、かえりなさいませ。」


召使さんたちの気まずそうな挨拶を聞き流して涼太くんと二人で二階の部屋へ上がる。


「…相変わらず無愛想ね。頭の色もやっぱり気持ち悪い。」
「横につれてるのもどっかの外人の血を入れた奴だし、ああやだ。」


そう、黄瀬くんは金色の髪に金色の目をしていた。それは地毛で、そのためすぐにどこか別の人間と作られた子供だと知られた。そんな彼は僕がこの家に来るまでずっと一人で酷い扱いを受けていた。
そして僕が来たと同時に彼は僕の唯一の世話係として異物どうしをくっつけてまとめて家から遠ざけるようにした。

「…はじめまして。黄瀬、涼太です。」

「はじめまして。…えっと、きれいな金色ですね。」


僕たち二人は似ていた。僕の母も色素が薄く、僕の髪や瞳は黒にはならず、青のさらに色素の抜けたような髪色だった。僕の色は母は好いていてくれた。だから子供の僕は素直に黄瀬くんの髪をきれいだと思った。

その瞬間に黄瀬くんが泣いてしまって困ったのをまるで昨日のことのように覚えている。

「ありがとう…ありがとう。俺、ぜったいに君の味方っスから。今決めたっス。絶対に、俺が君を守るよ。」

そんな、たった5歳の子供にあるまじきくさい台詞を吐いたあと、僕と彼の小指が絡まる。

「ぜったい。嘘ついたら、針千本飲んで死ぬ。」

たった5歳の子供の、金色の瞳は本気だった。




「…ったくあのババアども。わざわざ聞こえるように言ってるのが見えみえなんっスよ!胸糞わりぃ!」

「まぁ、あと1年の辛抱です。」

「まぁそうっスけど…。」


いま中学2年生になった僕と黄瀬くんは、高校は二人で全寮制の学校を受験しようと考えている。僕を家から遠ざけたくして、でも立場上なかなかできない父親にとっても、結構なお金持ち高校で全寮制なそこは好都合だからきっと資金的にはどうにでもなる。


「そんなことより黒子っち、こっちきてきて!」

2階の僕たちの部屋に行くためには一回別の大きな部屋を通る。いつもはこの部屋で別れてそれそれ着替えに自室へと入るのだが、今日はなぜか黄瀬くんが自分の部屋に僕を呼んでいる。

「どうしたんですか?犬か猫かひろいました?」

「そうじゃないっスよ!てか黒子っち忘れてるんスか?」

「え、」


口ではあきれながらも部屋の戸を開けて、その先へ促される。

目の前には、二人で食べるのにちょうどいいサイズのショートケーキと、小さな指輪。



「…え、」

「誕生日おめでとう。黒子っち。」


自分の誕生日にはこの家に来てから大して何もしてこなかったため、つい忘れていた。
でも、黄瀬くんはおぼえてくれてた。


「…よく、覚えてましたね。僕も忘れてたのに。」

「黒子っちの誕生日知ったの去年の5月っスよ?俺にとっては初めての黒子っちの誕生日だもん。どうしても、お祝いしたかった。」

「…ありがとう、ございます。」



―――うれしい。すごく、うれしい。



涙が出そうだった。でも泣くのは恥ずかしくて必死にこらえた。そんな僕に優しく微笑んだあと、黄瀬君は僕の左手を取って、指輪を小指にはめた。


「薬指はだめでも、小指なら許されるかなって、思ったんスよ。それに、小指は約束の指だから。」


『絶対に、俺が君を守るよ。』


「絶対に、俺が黒子っちを幸せにする。悪い奴ら汚い奴らから絶対に黒子っちを守ってみせる。俺は黒子っちの将来の好きな人の次でいいから、君のそばにいて、守りたいんス。」



「…あ、あいかわらず、台詞がくさいです。」


素直じゃない僕の口から出る言葉にも、黄瀬くんは笑ってくれた。



今僕の顔は、とても素直だ。









「黒子っち顔真っ赤っスよ!」

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