07/12の日記

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黒バス:勝手な大人と必死な子供(黄黒?)
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※まさかの社会人黄瀬×小学生黒子
※でもなんか掛け算じゃない
※黄瀬くんと黒子っちは遠い親戚ってことで一つ







最初は、とうとう順番がまわってきてしまったか…とか思ってた。
面倒ごとを親戚中でローテーションで負担している。その順番がきてしまったのだと。


たった10歳の子供に対して、俺たち大人はあまりにも酷い仕打ちをし続けてきたのだ。



【勝手な大人と必死な子供】



「あー、えっと、テツヤ君でよかったよね。」

「…はい。」

「まぁ今日から君の家ここになるわけだけど、正直俺けっこー忙しいからあんま家にいれないんだよね。だいたいお留守番って形になるけど大丈夫?」

「はい。」

「あ、そ?ならまぁいいや。あ、こっちの部屋好きに使っていいから。夕飯は出前でいいか…何か食べたいのある?」

「なんでもかまいません。」

「…あー、じゃぁピザね。」


約半年前。遠い親戚の母子家庭の家で、その母親が男と夜逃げした。
正直たいした面識もなかったし興味も無かったから自分には関係の無いことだと思っていたが、その置いていかれた子供をどこが預かるのかという問題は否が応にも巻き込まれた。
施設は世間体が悪いからさけたいが、正直親戚の恥さらしみたいな女の子供なんか預かりたくないというのが全体的な意見だ。仕方が無いから順番に子供の面倒を見ていくように決まったのが、母親の蒸発から3日目のこと。そっから俺に回ってくるまでに3軒たらいまわしにされている、らしい。

前いた家からの情報だとおとなしいし騒がないから楽ではあるが、逆に主張がなさすぎてよく消えるとか。存在感なさすぎて気持ち悪いとか。表情が変わらなくて何考えてるのかわからないとか。とか。

まぁ騒がしい餓鬼よりはいいかと思うが、基本子供は子供。面倒なことに変わりは無い。


モデルの仕事がそれなりにあるため子供の面倒なんか見てられる気がしないけど、まぁ少しの間、次の引き取り先が決まるまでの辛抱だと考えてもう一度その子供をみる。


(しっかし、すっげー無表情。まぁ唯一の親に捨てられてヘラヘラしてはねーっスわな。でも無表情もどうなの?なんかさめた餓鬼だなー。)


この子供に同情しないわけではないが、それでも面倒は嫌なのだ。
軽くため息を吐いてから、ピザ屋に電話をかける。その間に子供はてこてことあてがわれた部屋へ唯一の荷物である小さな旅行かばんを運んでいた。





「…で、どうなの?そろそろ一週間たつけど例の預かり子との同居生活は。うまくやれてんの?」

「たぶん上手くいってるっスよ!なんも文句言わないし。そもそも仕事終わってかえる時間とか基本部屋で寝てるっス。ほとんど顔合わせないからいることすらたまに忘れちゃうんスよ。」

「ふーん。めっちゃおとなしい子なんだ。よかったジャン。面倒な餓鬼じゃなくて。」

仕事場の友人である高尾っちとそんな雑談をしながら、今日も夜遅くまで仕事をして帰る。
ただその日は高尾っちと俺ん家で飲もうって話になり、二人で帰ったのが夜8時。普段より2時間程度早い。それでも子供はまぁ寝ていなくとも普通は家にいる。てかずっと家の部屋に篭って寝てるのだと思っていた。


「ねぇりょーちん。そのテツヤって子供いないよ?」

「部屋にいるんっスよ。影めっちゃ薄いから気づきにくいだけっス。」

「いや、マジでいない。部屋見たけど俺が見つけれないんだからいないよ。」

「え?」

え、いない?マジ?もしかしてこれ育児放棄とかなんとか言って俺のせいにされちゃう?

なんて、こんな状況で俺は自分の心配をした。それが顔に表れてたのか、高尾っちの表情が険しくなった。


「なーりょーちん。テツヤ君本当にずっと部屋にいたかちゃんと確認してた?その子の行きそうな場所とか、普段の行動範囲とかちゃんと把握してた?」

「いや、そんな…こっちだって忙しいし、テツヤ君はお留守番できるって…」

「……とりあえず今はいいや。なんか行きそうな場所とかねーの?探すにしても心当たりねーと難しいぞ。」

「……。」


(行きそうな場所…しらねーや。そういや俺が仕事してる間何してるのかも知らない。ご飯だけは食べれるようにお金渡して…でも何食ってるかしらない…。)


「おれ…」

「ん?」

「俺さ、テツヤ君のこと、なんもしらねーんス。金だけ渡して、あとはずっとほったらかしにしてた…次のとこが決まるまでだと思って…。」

ぼそぼそと俺がそう言うとあきれたような表情でため息をつかれた。口にして初めて、自分がどれだけ無責任だったのかを実感する。

「…とりあえず説教は後。とりあえず近場からいくぞ!」


そう言って高尾っちが足を玄関に向けた矢先、玄関が開く音がした。


「あ!!!君がテツヤ君か!なにしてんだ子供がこんな時間まで!あぶねーだろ?」

「あ…ご、ごめんなさい…。」


ちょうど帰ってきた黒子っちを俺より先に見つけて、一緒に暮らしてる俺がただ立ち尽くしてる間に初めて会った子供を叱ってる高尾っち。テツヤ君は初めて見る人にいきなり叱られてちょっと驚いてるけど、それでもしっかりと高尾っちの目をみて謝ってた。その光景を見て初めて気づく。


俺は、テツヤ君と目すら合わせたことが無かった。




「とにかく、ちゃんとりょーちんに理由話して、もっと二人で時間とれ。飲みはまた今度な!俺は帰るから、ちゃんと話するんだぞ!」

それだけ言って、玄関に立ち尽くすテツヤ君の背中を押して上がらせた後、帰っていった。
残されたのは俺とテツヤ君の二人だけ。


「…とりあえず、リビングいこっか。なんでこんな時間まで家にいなかったのか、ちゃんと話してくれる?」

「…ごめんなさい。」

高尾っちにはちゃんと目をみて謝ってたのに、俺には目すらあわせず、ただうつむいてるだけなことに、自業自得なのにショックをうけてる自分がいた。俺は今目の前の子供に初対面の人間よりも遠い存在と思われている事実を、まざまざと見せ付けられた気がした。

「…うん。謝るのはもういいから、いこっか。」

そう言ってテツヤ君の手をにぎった。リビングまで引っ張るつもりだった。そういえば触れるのも初めてだとか思う前に、普通に驚いた。


―――細い。異常なまでに。


普通の小学4年生がどのくらいなものなのかなんて知らないけど、それでもこの子供の手はあまりに細かった。ちょっと力入れたらすぐ折れてしまいそうで瞬時に力を緩めた。


「テツヤ君、ちゃんとごはん買って食べてる?」

「…はい。」

「嘘はつかないで。本当はお金何につかったの?」

「ぁ…ご、ごめんなさい…」


正直嘘か本当かなんてわかんなかった。だからカマかけたつもりだったのに本当に嘘だったようだ。
なんなんだよ。俺は子供ひとり満足に飯すらたべさせてなかったのかよ。

「怒んないから、正直に話して欲しいっス。何に使ったの?」

「……ぉ、か…さん」

「え?」



「おかあさん、探しに、いくために、使いました。」



ごめんなさい…。


テツヤ君のつま先に水滴がぽたぽたと落ちる。小さくて細い手が力いっぱい自分の服を握り締めてる。


大人は勝手だ。母親に置いていかれてつらくないわけが無いのに。会いたくないわけが無いのに。それを必死に我慢して、だれにも気づかれないように母親を探している子供を自分の都合でたらいまわしにして、腫れ物扱いして…そんな、勝手な大人である自分が恥ずかしかった。

泣き止んで欲しくて、そっと正面から抱きしめる。やはり小さくて異様に細い体はどうしても優しくしか抱きしめられない。テツヤ君の涙がぽたぽたと膝に落ちて、湿ったぬるい感触はそのままこの子の痛みを伝えるようだった。

「ごめんね。ごめんねテツヤ君。つらいよね。寂しいよね。当たり前なのに、気づいてあげれなくて、ごめんね。」

涙をぽろぽろと流しながら、テツヤ君は驚いたように俺を見上げた。初めて合った瞳は、きれいな空色をしていた。

「もうほっといたりしないから。極力仕事も速く終わらせる。早くかえる。だから、一緒にご飯食べよう?一人でこんな時間まで遠くいっちゃわないで。俺も、一緒に探すから。」



「いまさらだけど、俺と家族になって欲しいっス、テツヤ君。」



「…いいんですか?僕、邪魔でしょう?」

「邪魔じゃないよ。俺は、テツヤ君とちゃんと向き合って、ちゃんと家族になりたいんス。」

「でも、黄瀬さんの、お仕事の邪魔に、なっちゃいませんか?」

「ならないっスよ。」


ならない。

もう一度、しっかり目を見て言うと、少しだけ止まってた涙がまたぽろぽろとこぼれだした。
そのまま顔をくしゃくしゃにして、大きな泣き声をあげるテツヤ君の頭をただひたずらなでた。



この小さくて、必死にもがいてる子供を、今だれよりも愛して上げられるのは自分だ。



泣き止まない腕の中の小さな体を、少しだけ力をこめて抱きしめた。








***************
久しぶりにもほどがある更新なのになんでこんなややこしい設定にしたのか自分でもわからない



☆コメント☆
[桜華] 07-16 08:23 削除
がち泣きしました…。心にダイレクトにきて、今ならいろんな人に優しく接することができそうです。これからも頑張ってください、応援してます!!

[氏菜07-27 12:22 削除
泣けました……!!
テツくん頑張れ大人ちょっとこっち来いって凄い思いました((
高尾、ナイスポジションですね@そのまま何気によくウチきてテツくんと二人でキャッキャしてればいいとか思いましたvV

[柚] 08-08 03:58 削除
泣きました…!マジ泣きしちゃいました…!
そして高尾ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
続きがあるなら是非読みたいっ
テツヤくんが黄瀬との暮らしに幸せ感じるまで見届けたい…っ!
そんな情景がみたいっ!!
そしてお節介高尾に大賛成です、客観的に色々世話焼いてくれそうです面白がりながらも真剣に世話焼いてくれそうです!!!!

[めーこ] 08-26 23:06 削除
いいぞ、続けてくれ(←

[菜乃] 08-27 17:57 削除
り、リアルで泣いてしまいました…!(/_;)
これはもう是非続いてほしいですっ

[未夢] 09-11 01:06 削除
テツヤ君の「おかあさん、探しに、いくために、使いました。」で涙ぼろぼろ出ました。これは是非続けて欲しいです。

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