□第四話
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「海靖殿!また御活躍された様ですな!」
「…ああ、」
「我等も精進あるのみ!海殿を見習うぞ!」
拳を空に突き上げた兵士共の士気が上がる。そいつらを余所目に俺は縁側に座った。
水龍瀬に無理矢理同伴させられ、早五か月。各地に赴き戦績を上げた。御陰で皮肉にも三ヵ月足らずで一気に階級を上げられた。しかし、戦績だけではない。
一ヶ月に一度、兵士同士の訓練を兼ねた催しが開催されるのだ。それで俺は幾度と無く勝利し、異例の早さで上流階級へと上り詰めた。
…仮にも、自軍では高等軍師だ。兵士共なんざに負けられるか。
縁側から兵士共の訓練様子を眺めていた。
「此の所の御活躍ぶりは凄まじいものだ」
臙脂色の着物を着け腕組みをした漱明がいつの間にか背後の壁に凭れ立っていた。
「以前にも増して兵士の士気も上がっている。…私では役不足だったのか」
「役不足?」
「見目の事…。もう少しと言っていた。」
「もう、少し…?」
「…海靖殿はこちらの方には少々疎いようだね。兵士達の夜の『餌』、と言えば良いのか…」
「………」
「所詮男衆の集まりだ。以前は碧に傾いていた様子だったが此処の処は…海靖殿、貴方が標的らしい。夜は厠で御盛んだ」
「…気分を害す」
「…だが、それで士気が上るのならば越した事は無い。感謝しているよ。嗚呼、そうだ。碧からお呼び掛かっている事を言伝に来たんだ。そろそろ昇格の話じゃないか?」
ニコニコ笑う漱明を一瞥し水龍瀬の部屋へと足を運んだ。