□鏡張り
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雷雨が獰猛に荒れ狂う晩。
―息苦しさに眼を開ける。
「こんばんは」
刹那、雷神が照らし出したのは微笑を称える
…《オレ》自身だった。
『…夢ですか？』
「ええ、夢です」
艶やかな表情で息づく暇もなく淡々と答える。
『…何故、オレの格好をしているのですか？』
「俺は貴方自身ですから」
『………』
遠方で雷が轟く。ゆっくり起き上がろうとすると俺がオレに馬乗りになっていた為、自然と上半身をだけを起こす姿勢になった。
『貴方の傷は未だ癒えてないのですね…』
オレの言い分など聴く耳も持たず、つっ…と湿った着物の合わせ目の間に白く発光したような指先を掠らせ滑らせた。
『…だから俺が前線に出ているんですよ…貴方が、これ以上傷付かない様に…』
オレを抱き締め耳元で囁く慈愛とも哀れみともとれるその言葉。そこに温もりも感じはせず、ただ甘んじて享受した。
「…これは夢でしょう？」
『ええ、夢です。但し俺は貴方であり貴方は俺の一部です』
