□第一話
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見渡す限り屍の山。縦横無尽に地面に転がり落ちる。血溜まりと肉片、それと鳥が眼球を抉りつつき、乾いた血肉は人食者に貪られ歯と骨に僅かな肉を残す。
遠方には白地の布を巻き付けた旗がはらはら揺れ動いていた。
―――敵は殲滅。此の地に残す事なしに。そこに情けも憎しみも何もなく。崇高な享楽だけを求め。
「…あっけないものです」
あんなに栄えた大国の強軍がこうも容易く打破れるとは。
敗因は大国だった為隙が多かった事か。大型の大砲とそれを頼りにした軍人共。早々に破壊し、士気を失った所を徹底的に潰した。
屍を見下げふと視界に入ったのは自軍の兵。
「統帥。少々御時間を」
「…何用です」
「この度の戦績、素晴らしい活躍ぶりで御座いました。恐れながら我等兵一同より、感謝の言葉で御座います」
「…嗚呼、そうですか。本陣の様子はどうでした」
「は…報告によると残党の殲滅へ取り掛かる模様で」
主を失った唯の烏合の集共の末路。奴隷か死か。それだけしかない。
「…滑稽な事だ」
場違いな青い風が空を駆け抜けた。