□第二話
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「水龍瀬統帥、もう御戻りにならせられたのか。御苦労であった。」
「勿体無き御言葉です漱明殿。…相変わらず堅い言葉は似合いませんね」
「ははっ、それもそうだ。御帰り碧。今回も早かったな。私の軍は殲滅するのに一週間もかかったぞ。後処理も大変だったろ。どう殺っているんだ?」
「オレの軍は屍は放置主義です。鳥や人が食べてくれますし」
「凄いな。でも腐敗するだろ?あの臭いは嫌いだ」
人間臭い、と顔をしかめ鼻を啜り口を尖らして手で扇ぐ仕草をする。
「それに、自然が勿体無い。折角の緑を汚しい紅に染めたくないだろう」
「そうですね…」
その時、廊下から小さめの人影が走る音が聞こえた。振り向き見下ろすと片膝を置き胸に手をあて跪く姿。
「統帥!無事の御帰還何よりで御座います!」
「有り難う御座います。凜、そちらも御苦労様です」
「勿体無き御言葉…!」
「私への労りはなしか?」
「漱明様はもう十分労りました!水龍瀬様、聴いて下さい。我々は水龍瀬様の御帰還と聞き、歓迎会の前夜祭の準備を進めておりました。しかし、そこへ漱明様が現れその際に用意した酒や地方から取り寄せた食物を飲み食いなさったのです!」
「漱明。…酒も飲んだんですか」
「あー…いや、その…美味そうだったし少し位は私にだって」
「少量所ではありません…」
「大食漢の貴方が少しで治まるとは到底思えませんね。凜、オレの軍に蓄えがありますから大丈夫ですよ。」
「そうですか!では早速宴の準備に取り掛かりまする。失礼致します!」
「…凜め、私にはそんな馳走用意しなかったぞ」
「人徳の違いですよ。」
眉尻に皺を寄せる姿を一瞥し、大広間に向かい歩く。
「酷い事言うな。私にも人気はあるんだぞ。……何処に行く?」
「所用を思い出しました。今日は入隊審査があるんですよ」
「この時期に珍妙だな。…何処の者だ?」
「さぁ…見れば判りますよ。貴方も参加します?」
「…ああ。そうさせてもらうよ。」