Novels(with G)

□願い
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『星…見に行かないか?』
 真夜中、彼女のちあきをマンションまで送り届けようと車を走らせている時だった。どうして突然そんな気持ちになったのかは全くわからない、ただ俺は無性に「夜空に瞬く星」と言うものを見たいと思ったんだ。
 当然ちあきは驚いた。
「どうしたの?陽一、突然…。」「わかんないけど…なんだか急に見たくなってさ。…あっ、行きたくないならいいよ、1人で行くから。」
少し下手に出た俺に、ちあきは「しょうがない子ね」という感じで微笑み
「いいよ、行こ。」
と俺を促した。

 実は、今までにも何度かこういう衝動に駆られたことがあった。そしてそれは、必ずちあきと2人で過ごしている時、ふと浮かんでくる。その度にちあきはオレの気まぐれ・・・と言うか思い付きに付き合ってくれていた。

 高速を走らせること1時間。俺たちは、街灯も少ないような、都心から随分離れた海岸へと到着した。
『都会じゃ綺麗な星は見れない』
そんな俺の意見に、ちあきも賛成してくれたからだ。
 車を降りると、どちらともなく手をつないで浜へと下りた。
「わあっ…!キレ〜…。」
砂に足をつけた途端、ちあきは空に輝く満天の星を見上げて言った。真っ黒な海と真っ黒な空、そしてそこに散りばめられた無数の星達…それは1枚の「絵」のように素晴らしくて、思わず泣きそうになった。
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