Novels(with G)

□手紙
1ページ/2ページ

 今君に手紙を届けよう。もう涙も枯れ果てたから、今なら告げられるこの想いを込めて…。
 あの頃は普通に聞こえていた君の声が、今はとても胸に響くんだ。それは胸で震えて涙を生み、僕を支配した。

 どしゃ降りの夜、2人きりの部屋で
「もう二度と離れない」
と抱き合いながら誓った。
 嬉しいはずの夜がなぜだかとてもせつなくて、君が愛しくてたまらなくて、でもどこにもどかしい気持ちが残っていた。
 そんな不思議な夜だったのは雨のせいだったのか、それとも君の涙のせいだったのか…今の僕に考えられる術はない。ただ、あの雨音は、今でも尚、僕の胸にうるさいほど聴こえる。

「二人をつなぐ糸が見えたらいいね」
 先の見えない2人の未来に怯えて君が言った言葉だった。君は微笑んで言っていたけれど、その奥に秘めた悲しみと苦しみが痛いほど伝わってきた。
 暗い部屋の中で、たったひとつだけ明かりを灯して、そっと君にくちづけた時のせつなさはこれ以上ないほどだったんだ。
 神様、もしも2人が本当につながっていたのなら、どうかその糸を切らないでほしかった。それがたとえ赤い糸じゃなくても僕は全然構わなかったのに。2人がつながっていればそれだけでよかったんだよ…。

「形のないものなら壊れはしない」
 僕の記憶の最後にある君の声。泣き虫の君は大粒の涙をこぼして僕の目を見ていた。
 そしてあの時抱きしめた君の温もりは、今でもこの腕に残っている。冷めることなく…。

 今君にこの行き場のない手紙を届けよう。いつかこの想いが逝く日まで…。

『今あなたのそばに。ただあなたのために。ずっと二人の愛を抱きしめられたらもう離さない、あなたを。さぁ愛しい人よ、あなたのそばに遥か時を越え永遠に。どんなに遠く離れても、いつまでも…。』

 君の風になりたかった…それは永遠に。



☆fin☆
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ