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□Black
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「なぁ、この先に何があるんだ」

「知りませんよ…」

「じゃあなんで歩いてんだ?」

「それ以外思いつかないんですよ、出来る事が」

会話を切ろうと、思い切り疲れた様な声を作って顔を背けた。
私は今、只管に薄暗い空間を歩き続けている。

行くあてはない。
だるそうに歩く私の後ろを、一人の男がついて来る。

認めたくはないが、嫌な予感がしていた。






black







今の状況を進展させる術を知りたい。

気がつくと、此処に居た。
地面はあった。そして地面しかなかった。

無限の広がりを見せているのは、天と四方の空間。
光源らしい光源はないのに目は見えている。
目を開いた瞬間から、この謎の空間に一人立っていた。
そうだ。地面に蹲っていた訳でも倒れていた訳でもなく、立っていた。
まず其処からおかしかったのだ。

行き当たる壁のない心地の悪さから、私は腰を落ち着けられる場所を求めて歩きだした。
程なくして自分以外の人間を発見した訳だが、それは大した希望にはならなかった。

と言うのも、出会した長身の男は地べたにぽかんと座っており、
その男もまた「まさに今、目を開けたばかりです」という風に私の目に映ったからだ。
一応幾つか質問をしてみたが、やはり男は私と同じ立場の人間のようだった。
今は逆に質問されながら歩く破目になっている。
正直面倒臭い。
おまけに、先程から嫌な予感が頭を占領し始めていた。

「なんでこんなとこに居るのか訳がわからねぇな。何も思い出せねぇしよ」

「そうですか…私はなんとなく…」

「なんだよ」

「いえ、別に」

言い渋ると男は不満そうに薄い眉を顰めた。

実は、私は、もしかして此処って死後の世界なのでは…とか考え始めている。

男の立て続けの質問に答えていた時だった。
「疲れる」と思った瞬間、そういえば随分歩いているのに全く身体に疲労がない事に気づいたのだ。

夢の中なのかもしれない、とも思ったが。
その次の質問が私を地獄に突き落とす事となる。

「暑そうな服を着てるが何処から来たんだ」

男はそう尋ねた。

私はブリッグズ兵である。
そしてセントラルで作戦中だったのだと思い出した。

その時、男の黒尽くめの服が目に入り、突然に別の「黒い物」の記憶を呼び覚ました。


視界を埋める黒。

丸く切り取られた黒。
あれは、眼帯だ。

そうだ、私はキング・ブラッドレイと交戦中だった。

……あの時。



私は斬られた気がする。






「…人生というのは、終わりがあるから頑張れるんだぞ…」

「?なんか言ったか」

「いえ」

この空間同様に果てしなく途方も無い未来が、眼前に広がっている気がした。



「あーもう。やっと来たよ」

項垂れた私の前方から、そんな声が聴こえた。
見上げると、いつの間にか細身の青年が立っている。

「ずっと待ってたんだけどー?」

「遅いわよ、グリード」

続けて女性の声が聞こえ、その後ろにも何人かいるようだった。


何なんだこの集団。
集まっている人間の殆どが黒髪に黒い服を着ている。
私の格好も暑苦しいが、その点では相手も引けを取らない。

「あ?どうなってんだ?」

「いいから、早く並んでよね」

訝しむグリードとやらを、お父様も待たせてんだから、と青年が引っ張っていく。
家族…なのだろうか?
よく分からない内に黒尽くめ集団は横一列に並び始め、私は其処で初めて、眼帯をつけた男が居る事に気づいた。
なんとキング・ブラッドレイその人である。

「な、なんでお前が此処に!」

思わず青くなって叫ぶと、集団の視線が一斉に私に集まった。
ブラッドレイと薄眉男含め、酷い沈黙である。

「あれ、あんた誰?あ、丁度いいや。シャッター切ってよ」

「は?」

先程の青年はそう言うと、徐に私の手にカメラを持たせた。
もしかして、所謂家族写真を撮る為にみんなで並んでいるのだろうか。

「いや、あの」

「えーと、このボタンを長押しすればいいからね」

「はぁ…」

列に戻っていく青年を目の端で見送った私は、まぁいいかとレンズを構える。
どうせ夢か、もしくは死んでいるのだ。
黒尽くめ達が何者であっても、怖いものなどない。

レンズを覗くと、列の隅で寝入っている巨漢がフレームに入り切っていなかった。
…これはとても入らないぞ。
というか何故寝ている。誰か起こせ。

だが気にしない。
どうせ夢かもしくは…、なのである。



「撮りますよー」



一言声を掛け、私はシャッターを切った。





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公式終了後、負け組ウロボの記念撮影会の様子でした(笑)

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