SHORT(お題消化 全6)

□晴れすぎた空
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闇に降る紅い雨に


朝行く月も沈み


声無く事切れた
何処かの誰かを置き去りに



地上を歩く小さな私
地面に描いた血溜まり越えて




晴れゆく空の
その先に






















「お前は人間の皮を被った悪魔だッ!!」


「ほんとね…。でも…もう死んで」





暗闇の中で黒い血が飛ぶ。
男が動かなくなった事を確認し、少女はその場を去った。




仕事を終えた名無しさんは真っ直ぐアジト内の自室迄戻り、薄汚れた扉を閉める。

そして一息吐くとベッドの横に備え付けてあるテーブルの引き出しから一冊の本を取り出した。



その本には殆ど文字がなく、太陽に照らされた森や湖水、河川などの美しい風景写真が収められていた。



「…綺麗」


なんて綺麗な世界だろう。


写真を見ながらうっとりと溜息を吐く。
ゆっくりページをめくっていく掌には、くっきりとウロボロスの刺青が彫られていた。


太陽の光に満ちた風景の数々は彼女を取り巻く血生臭い闇の世界とは大違いだ。



「いいな…」



呟いた言葉はふわりと宙を舞った。



「!」




「おかえり」


突然後ろから絡められた腕。



慣れ親しんだその感覚は、ひんやりと冷たい。



「…ただいま」


「相変わらず仕事が早いね…名無しさん。造られたばっかにしては上出来だよ」

「…」

「でも返り血を浴びて帰ってくるって事はまだまだかな」

エンヴィーはくすくす笑いながら名無しさんを自分の方へ向かせる。
そしてどす黒い血のこびり付いた名無しさんの頬や指を丹念に舐め始めた。


彼曰く、人間の血で名無しさんが汚れるのは我慢出来ないらしい。



「エンヴィー。私、今度外に出てみようかな」


エンヴィーに身を任せたまま名無しさんは言う。



「何、まだ殺し足りないの」


「そうじゃなくて…、んっ」


唇に淡く落とされるキス。

名無しさんはエンヴィーを見上げた。
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