SHORT(お題消化 全6)

□百鬼夜行
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見て、あの月。



滴りそうに赤い。





それだけで人は




妙に胸が騒ぐものなの。







退廃的なその緋色は
夕方にはもう空にあった。






化け物が通る、刻の手前に。





















目の前に広がる空が赤くて。
あの林はますます黒くなっていく。


それが怖くて。


僕は帽子の縁を押さえて深く被り直した。






「名無しさん君じゃないか。何してるんだ、早く家に帰りなさい」

農作業をしていたその人は、僕を見て驚いたように言った。


「分かってます。あの…、兄を見ませんでしたか?」

「…いや、見てないが。どうかしたのかい?」

「もうじき夕方なのに、帰ってこないんだ…」

「そいつは心配だな。早くみんなに知らせねぇと」




薄気味悪い日だった。

夕方になって空気が冷えてくると、空が血の様に真っ赤に染まったのだ。

そして夕方前には戻る筈の兄さんが、一向に帰って来る気配もなくて。
僕は居てもたってもいられず、家を飛び出した。

村の人々と捜索を始めると、「だから言っただろう」「夕方には、黒い林に棲む化け物が人を攫っていくんだ」などと囁く声が聴かれた。
その人達も、過去に身内を失っていた。


日暮れまで捜し歩いたけど、子供だから危ないと村の大人達に言われ、家に戻って発見の知らせを待って。

その日はそのまま、眠れずに夜を明かした。






そして次の日も、そのまた次の日になっても、





兄さんは帰ってはこなかった。
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