SHORT(お題消化 全6)

□連鎖反応
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「まさか殺人犯と肩を並べてお話出来るとは」

「…あんたが言い出したんじゃん」

エンヴィーは呆れ顔で漏らす。



二人は街外れの荒野まで来ていた。
遠くに、国の中心地へ向かってくる汽車の姿が見える。

「ほんとは殺しといた方が都合いいんだけどさ。あんた誰にも言う気なさそうだし」

「ええ。なんのメリットもありませんからね」

命を狙われるのはごめんです、とあっさり肯定し、本当にどうでも良さそうに肩を竦めた。
やっぱり思った通りの人間だ。



あの後、死体をそのままにし、中年男の姿を適当に人間の目に触れさせてから現場を去った。
その時何故か名無しさんと名乗ったこの女軍人が、もう少し話をしないかと持ち掛けてきたのだ。
普段なら相手にしない。だがこの女には油断ならない雰囲気がある。
アジトに着く迄の間、後ろを確認しながら帰るのは酷く億劫に感じた。
どういうつもりか知らないが、この際だ。人柱になり得るか調べておく事にした。


「あんた、中央の人間じゃないね」

「東部の者です。よく分かりましたね」

「訛りがある」

「そうですか。自分では分かりません」

名無しさんは苦笑した。

訛りがあるというのは嘘だ。
俺が記憶する限り、少なくとも中央司令部にこんな人間は居ない。


「わざわざ東部から何しに来た訳?」

「休暇を頂いたので人に会いに来たのですよ」

正確には捜しに来たのだと、女は付け足した。先程路地にいたのもその為らしい。
あんな所に居るのは野良犬か犯罪者くらいだが。

「人探しねぇ。それは骨が折れそうだ」

「ええ。ですが仕方ありません」


「鍵を握る人間は一握りですから。此処セントラルでなら、見つけられる気がするのですよ」




よく分からなかった。


軍務の一環かとも思ったが、暢気に宝探しでもしているかの様なニュアンスがあった。




それは俺に聞かせるというよりは、呟きの様だった。
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