短編2

□始まらなかった夢の終わり
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よく幼なじみで「大きくなったら結婚しようね」なんて小さい頃に約束をしたりするけど、でもそんな約束を覚えてる人なんて実際は少ないと思うし本当にその約束を守る人なんてもっと少ないと思う。そんな捻くれた考え方しかできない私は、とっても可哀相だと思うけどでも元々私はこんなに捻くれていたわけじゃない。全部アイツのせいなんだ。


「よー」

『あぁ、今から部活?』

「おう、そっちは今帰り?」

『まぁね』


授業が終わったので帰ろうと思って玄関で靴を履き替えていると偶然幼なじみの元希に会った。顔を合わせたのは久しぶりなような気がするけど実際はきっと3日ぐらいしかたっていないと思う。ちょっと前までは毎日のように顔を合わせていたからそう思うだけなんだろう。

元希は、最近彼女ができた。小さくて可愛くて女の子らしくて元希なんかには勿体無いような子だ。彼女から告白して付き合い始めたらしいけど実は元希も気になっていたとかって言ってた気がする。彼女ができたら当たり前だけど彼女と遊ぶ時間を優先する。いくら野球バカの元希も勿論そうで、そうなると必然的に私が元希と会う時間は減っていくわけで。だから久しぶりに話せて嬉しかった。顔を見れるだけで幸せだなんて思った。それは、私は昔からずっと元希がすきだから、だ。


『お母さんが最近元希来ないねーってさびしがってた』

「は?マジ?」

『彼女も大事かもしれないけど、たまには顔見せてやってよ』

「おー、そのうち行くわ」


でも元希には彼女がいる。振られるのがわかってて想いを伝えられるほど私に勇気はないし、今の関係を壊すぐらいなら見てるだけの方がましだ。そう思いながらもお母さんを理由に使って元希にそう言ってみた。本当は元希に会いたいのは私。顔を見たいのは私なんだよ。幼なじみだもん、それくらいいいでしょ?それ以外は全部彼女のものなんだから。元希が笑って頷いてくれたから私はそう思いながら少し安心して頬が緩んだ。

その時だった。不意に元希の目が何かを見つけたらしく少し大きく見開かれて、直後とても嬉しそうな幸せそうな表情になった。そして「悪ィ、またな」と言って私の横をすり抜けていった。振り返るとそこには、彼女がいた。


彼女と何か言葉を交わして、そして楽しそうに笑い合う。二人は傍から見ても幸せそうで、本当に想い合ってるんだってことがわかる。元希のあんな顔、私は見たことがない。あんな優しい視線、私は向けられたことがない。あぁ苦しいなぁ。痛いなぁ。何であそこにいるのは私じゃないんだろう。何で、元希に好かれるのは私じゃないんだろう。そんなこと考えたって元希が見ているのは彼女だけなんだから無駄だってことわかってるけど。

元希は忘れてしまったかもしれない。一生叶うことはないかもしれない。でも、それでも私は昔交わした約束を心のどこかで信じてる。私の夢は今も昔も元希のお嫁さんになることなんて、誰にも言えないけど、でも元希が綺麗な花嫁さんの隣で幸せそうな笑顔を浮かべるその日までは信じるくらいは自由でしょ?…今はまだ、心の中でくらいそう思わせてよ。いつの間にか彼女と一緒に学校の外に出ていた元希の後ろ姿を見ながらそう思い、目を瞑った。大丈夫、私はまだ笑える。











始まらなかった夢の終わり
(初恋は実らない、ジンクスさえも憎い)


きっと榛名がこの彼女と別れてもヒロインと付き合うことはないんだろうなーっていう悲しいお話。

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