短編2

□僕たちの適正距離
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『あのね、彼はね、私のことすっごく大事にしてくれるの』


幸せそうに笑いながらそう語る彼女。だから何だよ。それをオレに言ってどうすんの?キョーミねェし、聞きたくねェ。オマエの口から出る他の男の話なんて。


『ワガママだってなんだって聞いてくれるの。私のこと愛してるんだって』


…ああ、そう。よかったな。で、何?オレに何を言って欲しいワケ?オレに何を求めてんの?オマエにやるモンなんて何もねーよ。優しい言葉なんて絶対吐いてやんねー。


『私、幸せ。彼に出会えて本当によかった。生きててよかったって初めて思えたの』


そうかよ。ふーん。あっそ。じゃあ、オマエにとってオレはそういう存在じゃねーってことだ。まぁ当たり前か。オレのことではそんな顔しねェもんな。オマエがそんな顔するのはアイツのことを話す時だけだ。


『榛名もできるといーね、そんな彼女』


うるせーよ、ふざけんな。オレに彼女ができようがなんだろうがオマエには関係ねェだろ。オレはオマエしか見てねンだよ。いい加減わかれよ。つーか、ホントはわかってんだろ?オレの気持ち知っててそうやって言ってんだろ。ありえねーよオマエ。最低だな。何でオレこんな女好きなんだ。自分勝手で人の気持ちを踏みにいじるこんな女を。自分が1番ありえねー。


『榛名に愛される人は幸せだろうなぁ。だってカッコイイし、エースだし、なんだかんだ優しいしさ』


じゃあオレのモノになれよ。そんなに言うならアイツと別れろ。そしたらオマエのその言葉、ホントにしてやるよ。そう言ったらオマエはどんな顔する?どーせ困ったみたいに笑って、冗談でしょ、とか言って流そうとすんだろ。いつもみたいに。いつまでもこんなヤツを想ってたって無駄なのに、何でオレはいつまでたってもコイツしか見えねェんだ。

なぁ、もう限界なんだけど。オマエはオレに何を望んでんだよ?オレの気持ち知っててオレにソレを言ってどうなんの?オレが諦めるとでも思ってんのかよ。だったら残念だったな。オレは諦めワリーんだ。そんなことじゃぜってー諦めねェ。つーか諦められんなら最初から好きになんてなってねーんだよ。そんな半端な気持ちじゃねんだよ。


『彼女できたら絶対紹介してね、榛名』


ワリーけどそれは無理だな。オレが彼女にしてェのはオマエだけだから他の女を彼女として紹介する気なんて更々ねーよ。そんなに見たかったらオマエがオレのモンになれよ。オレの方がぜってーあんなヤツよりオマエのこと。






僕たちの適正距離
(でもホントは、壊す勇気がねーのはオレの方だ)

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