短編2

□きらめきに誘われて
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キラキラ光るイルミネーション。寄り添い歩くカップル達。サンタの衣装を着ている店員さん。街中どこを見渡しても華やかに輝いていてみんな笑顔を浮かべている。私とは、対照的に。

仕方ないってわかってるよ。私の彼氏は部活で忙しいから付き合ってからクリスマスだのバレンタインだの世間一般の恋人達のイベントとかとは無縁なんだ。それは仕方ないってわかってるし、別に私を優先して欲しいなんて思ったことはない。…いや、ないって言ったら嘘になるけどさ。


一人で過ごすのがやだったから友達に入れてもらおうと思ったら合コン行くから彼氏持ちはダメとか言われるし、たまには家族といようかと思ったら夫婦でデートだとか言われるし、ホントついてない。家でじっとしてたらさびしいからこうして街に出てきたけど逆効果だった。周りはカップルだらけ。これなら家でクリスマスの特番とか見てたほうがマシだったかも…。


「すみませんっ、写メ撮ってもらえますか?」

『…え。ああ、いいですよ』

「このツリーバックでお願いしますっ」


ぼーっと大きなツリーの前に立ってたら多分私と同じくらいのカップルにそう頼まれて携帯を渡された。幸せそうに笑いながら寄り添う二人を一枚パシャリ。ありがとうございます、と嬉しそうに笑いながら二人は去って行った。


『…私何してんだろ』


道行く人達に私はどう見えてるのかな。一人でイルミネーション見にきたさびしい女?いや、実際そうだから否定はできないんだけどさ。…寒さが身に染みるなあ。


仕方ないってわかってる。わかってるけど、でも私だって本当は準太とこんな風にイルミネーションを見ながら歩きたかった。特別なことなんてなくていいから普通のカップルみたいに一緒にいたかった。こんなこと言ったって準太を困らせるだけだってわかってるから言わなかったけど。いい子のフリして私バカみたい。

あーあ、ホールケーキ買って帰って一人でやけ食いしようかなうん、それがいい。そうしよう。
(…私とことんさびしい女だなあ、)(なんか、泣きそう)


帰ろうと思って歩きだした時、ポケットに入っていた携帯が震えだした。取り出してみるとディスプレイには準太の名前が表示されていて。えっ?練習終わるの9時過ぎるって言ってなかったっけ!?そう思いながら慌てて通話ボタンを押す。


「今どこ?」

『えっ、あー…てゆーか、準太部活は?』

「終わった。今どこ?」

『何でそんな早いのっ?』

「…早かったら都合悪かった?」

『わ、悪くないけど…』

「今どこ?何してんの?」

『え…』


…なんか、準太怒ってる?いつもより低い声の準太にそう思ったこど、まさか一人でイルミネーション見てますなんて恥ずかしくて言えない。私と準太の間に沈黙が流れる。

ああ、ダメだ。声を聞いたら会いたくなってしまう。準太は疲れてるのに、せっかく早く練習が終わったんだから休ませてあげなきゃ。迷惑だ。我慢しなきゃ。


「…今誰かといる?」

『えっ、一人だけど…』

「本当に?」

『本当だよっ』

「…ならいいけど、どこにいるか言わないから誰か男とかと遊んでんのかと思った」

『はっ?ありえないから!』


私は準太一筋だもん!確かにさっき聞かれて答えなかったのはちょっと怪しかったかもしれないけど現に私は今一人だし、友達とか家族とかは考えたけど準太以外の他の男の子とクリスマスを過ごすなんて考え浮かびもしなかった。浮かんだところで絶対にそんなことしないけど。


「…あのさ、今から会えない?」

『え?』


準太からの突然のお誘いに私の心臓はどきんと跳ねた。そりゃあ嬉しいよ、だって準太から誘ってくれたんだよ?期待してなかったのにクリスマスに準太と会えるんだよ?嬉しすぎる!…でも。


『準太、疲れてるんじゃない?今度ゆっくり会おうよ』

「……」


ああ、またいい子ぶってしまった。でも、仕方ないじゃん。私は準太が大切なんだもん。私のために無理なんてして欲しくない。私は我慢できる。準太が会いたいって思ってくれてるって知れただけでも十分幸せだよ。私はいいんだ。もう慣れたから。


「…オレは今日会いたいんだけど」

『…え』

「疲れてないって言ったら嘘になるけど、彼女とクリスマス過ごしたいし」

『じゅん、た』


どうしよう泣きそうだ。準太の口からそんな台詞が聞けるなんて。私バカだ。準太の何を見てたんだろう。勝手に準太の迷惑になっちゃいけないなんて我慢して、自分の気持ちを言わないで。確かにワガママばっかりはよくないけど、ワガママと自分の気持ちを伝えるのとじゃ全く別のことなのに。


『私も、私も会いたかったよ、準太』

「うん。やっと言ってくれたな」


今まで我慢してた気持ちがあふれ出しちゃいそうで涙を堪えながらそう言ったら準太は優しく答えてくれた。もしかしたら私のせいで準太は不安になったりしてたのかな。私もっと会いたいとか言ってもいいのかな?準太、困らないかなあ。

でも準太が笑ってくれたような気がしたからこれからは少しくらいのワガママなら言ってみようと思えたんだ。


『ねえ、準太。私準太と一緒にイルミネーションが見たいな』









きらめきに誘われて
(きっと私達もさっきのカップルに負けないくらい幸せな顔をしているんだろうなあ)


ゆずさま、企画ご参加ありがとうございました\^^/

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