短編2

□夢より甘い現実を
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夢を見た。同じクラスの阿部が私に告白してきた夢。阿部のことはクラスメートとしか思ってなかったからびっくりして、でも嬉しかった。だから目が覚めて夢だとわかったときはなんだかがっかりした。

私は阿部が好きなワケじゃないのに何でこんながっかりするんだろうと思ったけど、誰かに好きって言われて嫌な気持ちになるワケないもんね。きっと阿部じゃなくても私はがっかりしたんじゃないかなあ。そう思ったけどなんだか違和感を感じた。


『あのね、昨日阿部が私に好きって言ったんだよー』

「はあ!?いつ!」

『夢の中で』

「…夢ってお前の?」


なんとなく、阿部に言いたくなったから話したらすごいびっくりした顔をされた。で、私の夢の話だよって言ったらあからさまにほっとした顔をされた。…なんか傷つくなあ。確かに夢の話で現実の阿部が私を好きなワケないんだけどさ。


「…で?」

『で、って?』

「それだけかよ」


阿部は何が言いたいんだろう。それだけって言えばそれだけだけど、そう言ったら嘘になる気がする。だって私は夢が本当だったらよかったのになって思った。何でそんなこと思うんだろう。変なの、阿部は友達なのに。


「オレのこと意識した?」

『……言わない』

「何だよソレ」

『だって、阿部は夢の中の阿部じゃないもん』


ああ、私何言ってんだろう。ワケわかんない。バカだなあ。何でかわかんないけど悲しくなって泣きそうになった。阿部が私を見てるのに気付いてバレないように俯く。


「現実のオレにも好きって言って欲しいの?」

『は…?何言って…!』

「好きだよ」

『…!』

「勝手に変な夢見んなよな。夢の自分に先越されるとかなんか腹立つ」


え、何言ってるの阿部。ってゆーか、今私のこと好きって言った…?は?え?何?まさかこれも夢なの?続きを見てるだけ?


「なんとか言えよ」

『痛っ』


混乱しすぎて黙ったままでいたら阿部は怪訝そうに眉を寄せて私の頭を叩いた。痛い。痛いってことは、これは夢じゃないの?え、阿部が、私を好き?


「夢じゃお前なんて答えたんだよ?」

『え…わかんない、気付いたら目覚めてたもん』

「ふーん」


そういえば夢の私は何て答えてたんだろう。嬉しかったのは憶えてる。確か阿部と二人で笑ってたような…なんかすごく幸せな気分だったような…。


「夢の続き、してやろうか?」


にやって笑ってそう言った阿部に不覚にもドキッと胸が高鳴った。そうだ。きっと、夢の中の私は阿部の気持ちに応えたんだ。だって今のドキドキ感はあの時の気持ちにそっくりだ。夢で告白されてから阿部への気持ちに気付くなんて私どんだけ鈍いんだろう。でも、夢を見てよかった。阿部への気持ちに気付けてよかった。


『…お願いします。』






夢より甘い現実を
(この手を握ればきっと、あの夢以上に幸せになれる気がするから)


緇葵さま、企画ご参加ありがとうございました\^^/

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