短編2

□永遠の時を、祈る
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なんか寒いなーと思ったら雪が降っていた。今年初雪だから感激して隆也に電話した。それで話してるうちに私が雪を見たい!って言って公園で会うことになった。…雪が見たいってのも勿論だけど、それは口実で実は隆也に会いたかっただけなんだけど。

ふわりふわりと真っ黒な空から白い雪が舞い降りてくる。それがとても綺麗。手を伸ばしたら溶けてしまう雪を名残惜しく見つめながら息を吐くと真っ白く空にのぼっていった。冬は寒いけどそんなにキライじゃない。雪だって冷たいけど、降るとわくわくする。そう言ったら隆也にガキって言われた。


『私がガキってゆーか、隆也が冷めてるんだよ!』

「いや、お前はガキ」

『…そんな即答しなくてもいいじゃん』

「つーか寒くねェの?さっさと帰ろうぜ」

『やだよー!せっかく雪降ってるのに!』

「(…だからさみーんだっつーの)じゃあオレ帰るから」

『はっ!?ちょ、待ってよ隆也!』


隆也なら本当に帰りかねない。そう思って咄嗟に歩き出した隆也の首に巻かれていたマフラーを掴んだ。引き止めたい一心でそのままぐっと力いっぱい引っ張ると、隆也のぐっと息の詰まったような声が聞こえて我に返って慌てて手を離した。


『わ、ごめ…っ!』

「おま…っ、殺す気かこの、バカ!!」


マフラーを手で押さえながら振り返って怒鳴った隆也の目にはうっすら涙が浮かんでいて。本当に苦しかったんだって思うとすごい罪悪感が募った。


『わ、私の首も絞めていいよ!』

「…ワケわかんねーんだけど」

『だってホラ、不公平じゃん!』

「使い方ちげーし」


呆れたように私を見る隆也に申し訳ない気持ちでいっぱいになって俯いた。ああ、私ってどうしていつもこうなんだろう。ただ隆也と一緒に初雪を見たかっただけなのになあ。隆也に会いたかっただけなのに。じわりと涙が滲んだ。

すると突然ふわりと首に温かいぬくもりを感じて顔を上げると、隆也がさっきまで首に巻いてたマフラーを私にかけてくれていた。はしゃいでてコートを羽織っただけの格好で来てしまったので、冷えた首元があったかい。


「ったく、んな格好で出てくんなよ」

『隆也風邪引いちゃうよっ』

「お前の方が心配なんだよ」

『風邪引いたら困る?』

「…何バカ言ってんだ」


ちぇ。隆也の口から聞きたかったのになあ。まあ隆也の性格じゃ素直に甘い言葉なんてかけてくれるワケないけど。そう思いながらもお言葉に甘えてマフラーを口元まで引き上げた。ぽかぽかとまるで心まであったまっていくみたいに感じるのはきっと、マフラーから隆也のぬくもりと隆也の香りがするから。すっごく安心する、私の一番大好きなにおい。



『隆也ー、雪積もったら雪だるま作ろうねっ』

「はいはい」

『それからかまくら作ってー、それからそれからっ』

「…オレはコタツでみかんがいいんだけど」

『えーっ隆也親父くさい!』

「………」

『えっ、うそうそ!帰らないでよーっ!」


一歩前を歩き出してしまった隆也の腕にしがみつきながら、来年もその先もこうやって一緒に初雪を見られたらいいのにって強く強く願った。









永遠の時を、祈る
(ねー雪積もって部活休みになったら一日中一緒にいられるかなっ?)(…そうなったらウチくれば?)(!…いくっ!)


あやめさま、企画ご参加ありがとうございました\^^/

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