今日は珍しく部活も学校も休み。こんなことは本当に珍しくて、ほとんどないから今日はゆっくり昼まで寝てようと決めていた。親にも妹達にも絶対起こすな!と釘を刺しといたから安心してオレはぐっすりと日頃の疲れを癒せるはずだった。そう、そのはずだったのに。
『おーきーろっ!』
いつもの癖で早々と目が覚めてしまい、でも今日は休みなんだと思い直して布団に潜り込み二度寝しようとうとうとしかけていた時だった。俺の安眠を妨害する聞き慣れた高い声。
『こーらっ!おきなさいっ!』
無視だ、無視。オレは今日寝るって決めたんだ。たまの休みなんだ、思う存分寝たって罰は当たらないはずだ。誰にもオレの睡眠を邪魔する権利はないはずだ!
『梓ーっ!おきろー!』
…だけどオレのそんな気持ちなんてつゆしらず、そいつはオレの布団をガバッと勢いよく奪い去る。急に差し込んできた光に目を細めながらもそいつを睨みつけるが、彼女はそんなこと気にも止めずになんだ、起きてるんじゃないと腰に手を当てながらオレを見下ろした。
『いつまで寝てるの!でかけるわよー!』
「…約束してねーよな?」
『してないけど梓今日休みでしょ?』
「休みだけど…今日は寝ようと思ってたんだっつの」
『いい若いもんがそんなこと言わないの!』
「いや、同じ年だろ」
オレの呆れたような視線なんて気にせず、いいからいいからと彼女はオレの腕を掴み無理矢理上体を起こしはじめた。どうやら、オレに拒否権はないらしい。…まぁいつものことだけど。そう思いながらも一度溜息を吐いてそいつを見る。
彼女は隣の家に住む幼なじみだ。普通高校生にもなれば幼なじみだろうと恋人でもない異性の部屋に入るのは躊躇われるはずだ。だけどこいつは昔と全く変わらずにオレの部屋に無断で入ってくる。…そういうとこが、オレを男として見てないっつーか、安心しきってるっつーか、ナメてるっつーか…なんかムカつく。
『ほらっ早く起きて着替えて!今日は水族館に行くんだからね!』
「水族館?」
『それから最近できたお店でパスタ食べてー、この間行ったケーキ屋さんでケーキ食べるの!』
それからそれから、とすらすら今日の予定を話す彼女に唖然とする。つーか一日でそんな回りきれるワケねェだろ…。そう思いつつも目を輝かす彼女を見ていると頬が緩んでしまった。
だってそれはきっと、彼女はオレが休みの日にしたいことをずっと考えていてくれたってことで、その間はずっと彼女の頭の中にはオレがいたってことで。なんかもうそれだけで今日彼女に付き合うには十分な理由な気がする。
『梓っ早く早く!』
「はいはい」
笑顔で俺を急かす彼女に答えながら起き上がり窓の外を見ると雲一つない快晴で、今日一日彼女に振り回されるのも悪くないなんて想ったその気持ちは多分惚れた弱みってやつなんだろうな。
この気持ちを口にしたら彼女はどんな顔をするんだろうか。そう思ったらなんだかちょっとわくわくして、耳を真っ赤にしながら怒る彼女を想像して先に居間に向かった彼女を追った。
今なら素直に好きといえる
(予想通り彼女は顔を真っ赤にして怒って、)(でも強く強くオレの手を握り締めてくれた)
なんだこれ(^q^)