短編2
□そして、重なる、二つの影
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いつものように、後輩であり彼氏でもある榛名君に練習の後に家まで送ってもらった。榛名君は普段部員の子達といるときは元気いっぱいなのに私といるときは口数が少なくなる。それを不安に思ったこともあったけど、でもそれは緊張しているからってことらしい。大人びて見えることもあるけど、やっぱり年相応なんだなって思って、なんだかそんな榛名君が可愛くてそれを聞いたときは笑ってしまったっけ。
「…じゃあ、また明日」
『あ、うん!また明日ね』
「お疲れっス」
『うん、榛名君もお疲れさまっ』
家の前に着いて、そう言葉を交わすと繋いでいた手を名残惜しげにお互い離す。付き合ったからといってあまり今までと関係は変わっていないけどこれだけは進歩したこと。帰りに手を繋いで帰るようになった。そして少しだけ寄り道をして色んな話をしてから家に帰る。それだけで私は嬉しくて、榛名君も嬉しそうに笑ってくれてるから毎日すごく幸せで。だから私は今の関係でもすごく満足だった。
「はぁ?まだキスもしてないのっ?」
『え、あ、うん』
「…榛名って奥手なんだねー」
『…う、ん』
だけど、だけど。やっぱり高校生にもなって付き合ってるのに手を繋ぐだけ、なんて…変、なんだよね…。目の前にいる涼音の哀れんだような呆れたような視線を見て改めてそう思う。
別に、私だってそういうのに興味がないワケじゃない。いや、興味深々ってワケじゃないけど、でもやっぱり榛名君が好きだしキスくらいはしたいなって思うこともある。だけどやっぱりそこは年下といっても男の子からっていう理想もある。だから榛名君からしてもらえるのを待っているつもりだった。
「ま、榛名はアンタに惚れてるから大丈夫だろうけどさー」
『え?大丈夫って?』
「ホラ、この年頃の男ならそういう事しか考えてなさそうなヤツもいるでしょ?」
『…よくわかんないけど』
そう、なのかな。今まで彼氏がいなかったワケじゃないけどよくわからない。男の子と女の子って根本的に考え方とかが違うと思うし。でも、榛名君がそう思わないのって、もしかして…私が原因?
そう考えた瞬間頭を何か硬いもので殴られたようにガンッと衝撃が走った。私に魅力がないから、だから、榛名君は…。そんな考えが頭をぐるぐる回る。私にはしたくないってこと?可愛くないから?胸が小さいから?…年上だから?嫌だ、どうしよう、もしかしてそのうち別れようって言われたりとか…。
「先輩?」
榛名君に呼ばれて、顔を覗き込まれてはっと我に返る。ずっと考えてるうちにいつの間にか時間が過ぎて部活帰りの時間になっていたみたいだ。心配そうに眉を下げる榛名君に気付いて私は慌てて言葉を返す。
『えっ?あ、何っ?』
「いや、なんかぼーっとしてたんで…大丈夫スか?」
『あ、うん、大丈夫っ』
最悪…!榛名君と一緒にいられる貴重な時間なのに…。そんな時間にこんなくだらないことを考えてたなんて。…いや、くだらなくはない、けど。
「…なんか、疲れてるみたいっスね」
『え?』
「今日は真っ直ぐ帰りますか?」
私を気遣って言ってくれたってことはわかってる。でも、今日の私はどうもおかしいみたいでその言葉が胸に突き刺さった。榛名君が早く帰りたいみたいで、…私と一緒にいたくないみたいで。そんな考えが頭を過ぎると目頭が熱くなった。
『……っ』
「え…!?ちょ、先輩…っ!?」
泣くな、泣くな。そう自分に言い聞かせても一度溢れたものを止めることはできなくて。後から後から零れる涙をごしごしと拭う。いきなり泣くとか意味わかんないよ、榛名君困ってるじゃんっ。止まれ、止まれ…!
「先輩…俺、何かしましたか?」
『……して、ないっ』
「じゃあ、何で…」
『榛名君はっ、私なんかでいいのっ?』
「…は?」
心配そうに私の顔を覗き込む榛名君に胸が苦しくなって、気付いたらそんなことを口走っていた。こんなこと言ったらうざいって思われるかもしれない。でも止まらなくて。
『私、年上だしっ可愛くないし…胸だって小さいから…っ』
「は、せ、先輩っ?」
『す、涼音に年頃の男の子は、そういうことばっかり考えてるって聞いて、なんか不安になっちゃってっ』
「……俺の、せいっスか?」
『榛名君は悪くないけどっ、私が魅力がないから…っ』
「…んなワケねーよ」
『え…?』
止まらない私の言葉を困ったような顔をしながら聞いていた榛名君だったけど、不意にそんな風に呟いた。そして次の瞬間、腕を強く引かれ気付いたら私は榛名君の腕の中にいた。
『は、るな君…っ!?』
「魅力ねェとか、そんなのありえねー」
『え…』
「もう無理っス。我慢の限界。…先輩、かわいすぎ」
その言葉の意味がわからなくて私は榛名君を見上げる。するとゆっくりと榛名君の顔が近付いてきて…えっ!嘘…!おもわずギュッと目をつむった。今の私、絶対変な顔してる。こんな顔絶対絶対榛名君に見られたくないよ。そんなことを思っていられたのは、唇に柔らかい感触を感じる直前までで。その次は幸せすぎて何も考えられなくなった。
重なった私達の影を、夕日だけが優しく見守っていた。
そして、重なる、二つの影
(人の気もしらねーで…)(え?何か言った?)(いや、何でもないっス!(…がっついてると思われたくなくて必死で我慢してたのに))((明日涼音に報告しなきゃっ))
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相互サイトさま「rego」管理人さまのりんへ10万打のお祝いに勝手に贈呈\^^/(迷惑!)
相互記念に書いた純粋榛名を気に入ってくれたみたいなので、続編を書いてみました!リクも聞かず勝手に送りつけごめんよー><!
10万打本当に本当におめでとうございますっ*
※りんさまのみお持ち帰り可ですっ
お題提供:確かに恋だった