短編2
□恋をしていますありがとう!
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昨日私は髪を切った。念のために言っておくと別に失恋したとかそんなことは一切ない。私には阿部隆也ってゆー愛する彼氏がいるし別れるとかそんな不吉な予定はないってゆーか考えたくもないし阿部と別れるなんて絶対やだ無理死ぬ!……は、話は脱線したけど、とにかく私は髪を切った。所謂、イメチェンってやつだ。
登校してきてまず元中の友達に会って「おはよう、髪切ったの?可愛い!」って言ってもらえた。この髪型イメージどおりにしてもらえて自分でも気に入ってたからすっごく嬉しくて、お礼を言ってから私はうきうきで教室に向かった。そして教室に入ってクラスの友達にも「髪切ったんだ!可愛いー似合ってる!」って言ってもらえて私の機嫌は最高潮だった。…阿部も褒めてくれるかなあ?なんて考えながら私は少しそわそわしながら時計と教室のドアを見比べる。
教室にはもうほとんどの人達が登校してきていて、あとちょっとでチャイムがなるけどみんなギリギリまで仲の良い子達と話したりしている。もうすぐ野球部も朝練が終わって教室にやってくるはず。早く来ないかなーなんて思っているとドアが開いて野球部3人組とマネジの千代が姿を現した。
『おはようっ阿部!』
「あぁ、おはよう」
花井と何かを話している愛しの阿部に向かって私は声を掛けた。すると阿部は私に気付いて挨拶を返してくれる。あぁ、我が彼氏ながらなんてカッコイイの阿部…!今日も愛してる!と言いたくなったけど人前でこんなことを言ったら阿部に怒られるので我慢。それよりも、それよりも。阿部に髪を切ったことを気付いて欲しくて、そしてあわよくば褒めて欲しくって、私はジッと阿部を見つめた。
「…何?」
『え、あの、えっと。阿部なんか気付かない?』
「は?何が?」
阿部の本当にわからない、というような顔におもわずあんぐりと口を開けてしまう私。え、嘘。本当にわかんないの?…冗談、だよね。い、いつもの意地悪だよねっ!?阿部はいつも最初落としといて後から上げるっていう所謂ツンデレってヤツだからなうんそうだそうに決まってる!まさかまさかと思いながらもそう自分に言い聞かせていると不意に阿部の後ろからひょこっと水谷が顔を覗かせた。
「あれ、髪切ったー?可愛いー!」
水谷の一言に私の思考は一瞬停止する。み、水谷…!何でアンタが先に…っ!そう思いながらも阿部を見ると、阿部は水谷の言葉の意味がわからないとでも言いたげに私を見ている。まさ、か。本当に気付いてなかったの?毎日顔合わせてるのに?…彼女、なのに?そう思ったらなんだかすごく悲しくなってきた。そしてそれと同時にそのやりきれない思いが八つ当たりだってわかってるけど水谷への怒りとなっていくのを感じた。
『…何で、』
「え?」
『何で水谷が先に気付くのよバカー!』
「えええ!?ひどっ!俺褒めたのに…!花井ー!」
私が気付いて欲しかったのは阿部で。可愛いって褒めて欲しかったのは阿部だけで。なのに当の阿部は何も気付かないで先に水谷が言っちゃうなんて。別に水谷は何も悪くないのに私は気付いたらそう叫んでいた。水谷は私の言葉にうっすら涙を浮かべて花井に泣きついている。でも悪いけどそんなの気にしてる余裕はない。
『何で水谷が先に気付いて阿部は気付かないワケ!?』
「は?何か変わった?」
『…っ!信じらんないっ!』
花井の後ろに隠れている水谷をひと睨みしてから今度は阿部にそう詰め寄る。だってだって、おかしいじゃない!私は阿部の彼女なのに…!百歩譲って、百歩譲って最初に気付かなかったとしても、言われたら「ああそういえば」くらいの反応してくれてもいいでしょうがー!
(阿部のバカ!たれ目っ!)
『千代っ!千代は私が髪切ったの気付いたよねっ!?』
「え、うん…!すっごく可愛いよ!」
『ありがとうっ!ねぇ、花井!花井も気付いたでしょ!?』
「あー…まー、うん」
『普通彼女が髪切ったら彼氏なら気付くよね!?』
「…まあな」
「悪かったな、普通じゃなくて」
「仕方ないじゃん、だって阿部だもん」
『うるさい水谷は黙ってて』
「ひ、ひどい…!」
悪いけど水谷に構ってる暇はない。千代だって花井だって気付いてくれた。なのに、何で阿部は気付かないの?そう思ったら悲しくなってきた。阿部はいつも私のことちゃんと見てた?ひどい、ひどいよ阿部…。
『阿部は私のことなんか興味ないんだ…!どんな髪型してようが関係ないんだっ』
「まあ、別に関係ねーだろ」
『ひっど…!』
ただでさえすっごく悲しくって、自棄気味に私がそう言うと阿部はあっさりとそう答えた。関係ないって何!?私は阿部の彼女じゃないの!?もうなんなの、阿部は私のことそんなに好きじゃないってこと…?目頭が熱くなる。ダメだ、こんな所で泣いちゃ。涙出るな…!
「…どんな髪型してよーが、お前はお前だし」
涙を堪えるために俯いていると不意に阿部のそんな言葉が耳に届いた。驚いて顔を上げると阿部が少し頬を染めながら「何だよ」と言った。…阿部。今のって、どんな髪型してても私ならいいってこと?私だったら何でもいいってことだよね…?じわりと涙が溢れたけどそんなことはもうどうでもよくって。私は勢いよく阿部に抱きついた。
「…っ、おい!」
『阿部ーっ!もう超好き!大好き!愛してるっ!』
「…あー、はいはい。よかったな」
照れているのか素っ気無くそう言う阿部が愛しくてたまらない。もう気付いてくれなかったとか、そんなのはどうでもよくなっちゃった。阿部の言動でいちいち一喜一憂してしまう私は傍から見たらバカな女かもしれないけど、阿部のそばにいられるなら何だっていいや。
「(それでいいのか…!?)」
「(阿部気付かなかったの正当化してるだけじゃん…!俺は褒めたのにー!)」
「(幸せそうだなぁ。よかったね!)」
『私も阿部なら何でも愛せるよ!』
「はいはい、よかったな」
せっかく可愛くしようと頑張ったのにそれに気付かないくらい鈍くっても、ちょっと意地悪でも、私は阿部が大好きです。
恋をしていますありがとう!
(阿部ー、じゃあ私が花井みたいに坊主にしても愛してくれる?)(いや、無理)(…!ひどい阿部…!)
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愛するくーちゃんへの相互記念でした、が…何このウザイ彼女…!
<7組でわいわいする感じの阿部ゆめ>というリクをいただきまして、7組でわいわいする感じを出そうと頑張りつつなんか阿部君は些細な変化にも気付かないんだろうなーと思ったらこんな話になってしまいましたorz
くーちゃんこんなのしか書けなくてごめんねーっ><!こんなんでもくーちゃんへの抑えきれない愛はもっさり(その言い方やめろよ)つまってますが、苦情どしどし待ってます!返品も可ですよー!あ、愛は返品できませんがねっ(^q^)(何こいつうぜぇ)
こんな私ですがこれからもよろしくお願いしますっ*
※相互記念につき黒峰さまのみお持ち帰り可ですっ
お題提供:確かに恋だった