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□むだなゆるしを
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きらきら、光る日差しの中
縁側に腰掛けた土方の腿で
半ば微睡む退の髪を梳き


少し昔を思い出す


「強くなったな」
「…ん、どうしたんですか?」

「いや、眠ってろ」
「ん、はい‥よ…」





***********





斬り掛かる山崎を制し
ぱしり、頬を叩く乾いた音

土方の目には
怒り、蔑み、そして困惑



「テメェ…何しやがる」

「ねえ、副長」
ただ俺は死にたいだけなんです



その抑揚のない声に
その泣きそうな顔に



「だから、そんな目で見ないで」



己の腑甲斐なさに
言葉が出ない



「あんたの、副長の下で」


そう云って
無理繰り微笑む虚ろ


其処で土方は漸やく
退の焦点が合っていない事に気付く



「おいッ、山崎…ッ」


肩を掴み
乱暴に揺すれば



とろん、とした目で
宙を仰ぐ



紡がれる言ノ葉は
暗く救いすらないのに

流れはじめた涙は
自分を非難する様なのに


その嘘吐きな笑顔が
土方には幸せそうに視えた



「なら、俺だけの狗になれ」
「厭なこった…」



胸鞍を指が掠める前に
気違いの様の嗤いだす



「あははは…!冗談ですよう」
「山崎、テメェの云ってる事は滅裂だぞ」

「そうもなりますよ」



副長、アンタ俺に幾つ屍を作られせたら気が済むんです?

躰を何回差し出せば俺は自由になれるんですか?



「…そんなつもりは、」
「好いんです、副長」

それが俺の仕事ですから





***********



なあ、山崎
あれからお前の感情は
死んで仕舞ったみたいだ


なあ、山崎
あの時の俺の行動に答えはあったのか?



壊して仕舞った壊れ物に
そう、と優しく口付ける



赦されない罪へ
無駄な赦しを乞う様に








КΦNЕС



ハルカ様ゑ
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