とりかえばや
□No.3
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翌日。
あれから保健室で寝こけていた俺は、結局何の対策もしないまま家へと帰ってしまった。
そのことを若干悔やみつつ学校へ行く。
日課である花壇と飼育小屋の手入れを済ませて教室に入ったが、山本の席にはまだカバンがない。
友人達とたわいない会話をする。
それが打ち破られるそのときまで。
「大変だー!!! 山本が屋上から飛び降りようとしている!!」
その言葉を聞き、誰もが冗談だと思っているうちに飛び出し屋上へと向かう。
すでに人だかりができている屋上への階段を人を押し分けながら進み、ついに一番前へと立つ。
俺の姿をみとめた山本が口元をゆがめる。
「倉沢か。お前みたいなやつにはオレの気持ちなんか分からないだろう」
言外に説得しても無駄だということをにじませながらはっきり通る声で言う。
「そうか? 案外分かるぞ。俺も経験者だ」
ちょっとみんなの前で話すのは気恥ずかしいが。
「けどな、絶対に気付かれないと思ったのに気が付かれて。絶対に失敗しないと思ったのに失敗して。そのあとあのまま死んだほうが絶対楽だったって思えるぐらいに怒られた」
今思うと恥ずかしすぎる。
過去に戻って自分をぶん殴ってやりたい。
山本は俺の体験を聞いて少し呆然としている。
その隙にいつのまにかやってきて小さくなっているツナを呼び寄せ後を任せた。