蒼の民の血と共に
□V.やどや
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さて、そんな道中。
ある晩急に土砂降りに降られた。
男は二人を促して街道沿いの宿へと逃げ込んだ。
シオンは暖炉に赤々と火が灯っているのを見てとると部屋をウォルに任せリィを引きずって火のあたる場所へといった。
「おや、お嬢さんに坊や。早く服を乾かさないと風邪を引いてしまうよ」
穏やかな旅人がそう言って場所を開けてくれたので二人は素直に礼を言い火にあたった。
リィは胴着をするりと脱ぎ頭の布も取り去った。
純金の髪が暖炉の炎できらめくのを見てシオンはほうとため息をつく。
何と素敵な金髪なのだろうか。
その思いは周囲の男達にとっても同じもであったようだ。皆度肝を抜かれた表情をしている。
「驚いた。お嬢ちゃんだったのか」
「今はね」
そんなやりとりも微笑ましく聞いていたのだが、無粋な男の声にそんな気持ちも壊されてしまった。
「ちょいと小粒だが上玉じゃねえか」
この様子を宿をとる手続きをしながら眺めていた男は思った。
何ていうことをシオンの前で言ってくれるんだ、と。
「身体を売るのが商売なら、高く買ってやるぜ」
そう言って少女の肩に伸ばされたては少女によって払われるよりも先に横にいた女によって捕まえられた。
「あ?お姉ちゃんが相手してくれるのか?」
「ええ」
シオンは今までに見せたことのない妖艶な笑みを浮かべ、そのままつかんだ腕をひねり上げた。
周囲が先ほど以上の驚愕に包まれる中、女は男の急所に蹴りを叩き込み、悶絶する男を放置して再び暖炉の前にゆったりと座った。
「別に自分でやれたのに」
少し男を気の毒そうな顔で見ながら言う。
元は少年だったと言うリィはさすがに思うところがあるのだろう。
「ああいう輩にはあれくらいしてやらなきゃだめなのよ」
それに飄々と答えるシオンを見て、変わっていないなと、ウォルは嬉しげに笑みをこぼした。