蒼の民の血と共に

□V.やどや
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それにしてもリィの身体はとても人とは思えないものだった。
そして、シオンの体力も予想以上にあった。
ウォルはそれといって歩をゆるめることなどしていないのだが彼女達は意に介さずにスタスタとついてきた。
シオンに至っては男や少女よりもよっぽど重たそうな荷を背負っているにも関わらずだ。
何度も持とうかといったのだが、医者の命と言い切られてしまっては手を出せない。
それは、己が他人に剣を任せて道を歩くことと同意だからだ。

食料を調達する際、リィのその尋常でない身体能力は大変役に立った。
男の目の前で、気配を巧に消し短剣を投じたり、全力で逃げる獲物に飛び掛って倒す。
しかし少女は決してシオンの前ではその力を見せるようなことをしないのだった。
不思議に思い尋ねるも、少女も首をかしげて分からないと返事をする。

「シオンもきっと僕の事を変な目で見たりしないと思うんだ。それなのに、なんか見せたくないんだ」

リィは思う。
あの相棒を思わせるような黒と蒼ををもった女のことを。
何故そんな気にさせるのだろうか。
ウォルは思う。
幼い頃突然出会ったあの女のことを。
彼も名を告げるとき、彼女の前で名を告げることにひどくためらいを覚えた。
リィとは違いその思いの元も分かっているのだが。
彼女には、出会ってから分かれるまで変わらなかった彼女には、そのままでいて欲しかったのだ。
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