蒼の民の血と共に
□V.やどや
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「あら?寝台は一つしかないの?」
「あいにくと人でいっぱいでな」
「そう、じゃあリィ。一緒に寝ましょう」
「え?」
突然の提案に思わず素っ頓狂な声しか出せないリィに追い討ちをかけるようにウォルが言う。
「うむ。俺もそれが一番いい方法だと思うぞ」
「ちょっと、ウォル」
「大丈夫よ。リィは女の子だし、二人で寝ればちょうどいい大きさよ」
「だからぼくは男だったんだって」
リィも必死で抵抗するが、その甲斐なくシオンと二人で台を使うことになってしまった。
「さて、久しぶりに屋根のあるところで休めるし、薬の整理でもしようと思うのだけれどいいかしら?」
「薬?」
少女が小首をかしげる。
その仕草が女の子に見えるのだということはシオンは賢明にも黙っていた。
「ええ、言ってなかったかしら。私、医者兼薬師なの。これでも中々の評判なのよ」
そういって、いつも背負い込んでいた荷の中身を広げだす。
「ほう、大したものだ。そこらの屋敷よりもよっぽどの数があるぞ」
「そりゃあ、長いもの」
そう言ってようやく広げきった薬を見渡す。