蒼の民の血と共に

□U.なまえ
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少年、いや少女と男――つまりウォルとリィは楽しげに、少なくともはたから見ればそのように見える会話をしていた。
内容はなかなか人前でできるものではなかったが。
会話に一区切りついたのかウォルはまじまじと少女を見つめた。
男は長年の習慣、主にすぐそこにいる女とその兄のおかげで、何かがあったときには自分の直感と五感を信じることにしていた。

「お前、それで、これからどうする」
「君達と一緒に行くよ。邪魔でなければ」
「あら、私も一緒に行くことになっていたの?」

きょとんとしたシオンに対しリィはその瞳を見開いてみせ「行かないの?」と逆に不思議そうに尋ねてきた。

「いや、だめだ。シオンには危険すぎる」
「そうねえ。私はそもそも荒事に向いていないもの」

そう言って嘆息する女にどの口でそれを言うかとも思う。
男がまだ少年だったころ。
彼女の兄と三人での取っ組み合いのけんか。
勝者はいつも彼女だった。
しかし、それと今迫っている危険は全くの別物。

「それってひょっとしてぼくにも言ってる?」

少女は悪戯っぽく笑う。

「ぼくは大抵の危険なら自分で何とかできる。少なくとも足手まといにはならないはずだし、ついでに君を助けることもできる」
「私は逆に大抵の危険は人に助けてもらわなきゃいけないし、足手まといになるのは確実よ」

シオンはいたってあっけらかんと言い放つ。
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