蒼の民の血と共に
□N.こーらる
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昨夜、リィたちがコーラルについて話していた部屋で、シオンはこの砦の責任者と顔を合わせていた。
「初めまして。私はシオンと申します。先日まで南方の地におりましたが、遅ればせながら陛下ご即位の話を聞きつけコーラルへと向かおうとしていた次第です」
「失礼だが、陛下とはどのようなご関係で」
「幼少のみぎりに親しくしていただきました」
頭を下げつつかしこまった言い方をするシオンを見て、同席していたリィは何かを言いたげな顔をしていた。
その様子を見咎め、女は言う。
「いいこと、リィ。公私の区別をつけることはとても大切なことなのよ」
暗に自分の今の態度は外面だと言っている女にウォルはたまらずに吹き出す。
ナシアスも笑いをその口元にたたえ、穏やかに問い掛ける。
「シオン、と言ったね。これからどうするつもりだ」
「ええ、できればコーラルへ向かおうかと思っています」
「…シオン。オレはてっきり諦めたものだと」
「そんなわけないでしょう。あなた達についていくのは諦めたけどのんびりと向かうつもりよ」
ウォルに対する言葉遣いが気に障ったのだろう。
屈強な男が何かを言いたげにこちらへ歩み寄ったが、その前にシオンは再び言葉を発する。
「そういう訳ですので陛下、道中のご無事をお祈りしております」
にっこりと微笑む顔にそれ以上の言葉は封じられてしまった。